研究課題/領域番号 |
26350323
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
多川 孝央 九州大学, 情報基盤研究開発センター, 助教 (70304764)
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研究分担者 |
井上 仁 九州大学, 情報基盤研究開発センター, 准教授 (70232551)
安武 公一 広島大学, 社会(科)学研究科, 講師 (80263664)
山川 修 福井県立大学, 学術情報センター, 教授 (90230325)
隅谷 孝洋 広島大学, 情報メディア教育研究センター, 准教授 (90231381)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ウェアラブルセンサ / 共同体感覚 / 学習コミュニティ / ラーニング・アナリティクス |
研究実績の概要 |
平成26年度は学習コミュニティが内部で知識を生み出し学習を促す能力を評価する指標を構築する準備として、学習コミュニティにおける学習者の活動と作用の計測に関する研究を行った。 具体的には、個人の行動や個人間のコミュニケーションと、コミュニティの中の個人が周囲に対して感じる「共同体感覚」の相関を調査した。学生が数日間合宿を行い地域の問題の解決に取り組む「地域協働学習」のプロジェクトに対し、ウェアラブルセンサを導入し、センサから得られる学習者の各種の行動やコミュニケーションの特性と、アンケート調査による共同体感覚の変化の比較を行った。この実践を通じ、センサーによって検知される「体の動き」とそれぞれの学習者における「共同体感覚の変化」に一定の相関が見られることが明らかになった。この相関は負の値を持ち、すなわち、共同体感覚は他者の体の動きに影響される形で変化しているものと考えられる。この共同体感覚は学習の動機付けや持続の基盤になると言われており、ここから、本研究により「学習の場」が確立される要因を計測する可能性が明らかになったといえる。 この実践のデータにおいては、体の動きの他に、直接的な学習者間の対面関係のデータもウェアラブルセンサの出力として収集されたが、対面関係の情報を交えた分析では共同体感覚との間に有意な相関は見られなかった。この原因としては、他者を認知する形として「対面する」という形が必ずしも必須ではないことや、対面・対話という行為の(共同体感覚をに対する)作用が単調に強まるばかりではないことなどが考えられる。これらについて、次年度以降に研究を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ウェアラブルセンサを実践において利用する機会が得られたため、実環境における計測とアンケート調査における心理学的指標の比較を行うことができた。 当初は今年度には先行研究にもとづき学習コミュニティの評価指標の候補を列挙するにとどめる予定であったため、実践と計測によってその候補の一部を確認できたのは、順調な進捗といえる。
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今後の研究の推進方策 |
学習コミュニティの評価に対して、質的分析手法ではない評価手法としてウェアラブルセンサの活用の可能性が生まれたため、この種のセンサのどのような情報が学習の持続や成功につながるのかを検討する。またこれとあわせ、この種のセンサを教育工学分野の研究のために運用する方法論についても検討する。このために、前年度と同様合宿などの形で行われる学習の場にウェアラブルセンサを持込み、このデータと、学習者の作業状況やコミュニケーションの状況、学習成果(学習評価)などを突き合わせた分析を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度、一部研究分担者に主に研究打ち合わせのための旅費を計上していたが、多忙により研究打ち合わせを学会発表の時期に集約して行うなどしたため年度内の旅費の支出が当初より少なくなった。このため該当額を次年度に使用することにした。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度、旅費について使用見込額よりも実際の使用額が少なかったぶんについては、次年度の研究打ち合わせおよび国内出張で支出するものと計画している。
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