日本の高等教育がユニバーサル化し学生の学力が多様化する中で、大学授業を、学生の主体性を重視したスタイルに変革させることが求められている。本研究は、そのような授業スタイルの一つである“ファシリテーション”に着眼している。そこでは、如何なるテーマがこれに相応しいか、また如何なる授業分析法が適切であるかを調査することを目的とする。 第一に、これまで実施されてきた討論主体の授業を分析の対象とした。一大学で行われたある自然災害テーマを素材として、分析項目を抽出した。第二に、立法に関係のあるテーマを素材として、ファシリテーションを行った。そして、先の分析結果を参考にしつつ、新たな分析項目立てを行い、テーマ選択等の適切性を分析した。第三に、国防に関係のあうテーマを素材として、ファシリテーションを行った。その結果、テーマ選択と授業分析にかかる項目を抽出することができた。 分析の結果、授業分析に資する項目としては、(講義の)核、対比、喚起、裏付け、矛盾、決意・願望の6点があげられた。一方、テーマ選択に関しては、参加者の関心、参加者にとっての重大さ、ファしいてーションを行うことの効用、ファシリテーションを行うのに必要な前提知識・体験、ファシリテーションの実施中のコントロール、禁忌(話題に関してのいわゆるタブー)、非偏向(または中立性)、の7点があげられた。これらの結果は、今後大学でファシリテーションを行う際、そのテーマ選択等に際して参考に資することが期待される。
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