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2016 年度 実施状況報告書

自動化とSensemakingの観点から捉える教師の熟達過程に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 26350339
研究機関新潟医療福祉大学

研究代表者

遠山 孝司  新潟医療福祉大学, 健康科学部, 講師 (50468972)

研究分担者 浅田 匡  早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (00184143)
吉田 重和  新潟医療福祉大学, 健康科学部, 准教授 (30549233)
西原 康行  新潟医療福祉大学, 健康科学部, 教授 (50339959)
研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2019-03-31
キーワード教師の熟達化 / 大学教職課程 / 自動化 / Sensemaking / ワーキングメモリ
研究実績の概要

本研究は大学の教員養成課程における教師としての成長を,授業を経験する中での教授行動の自動化と授業内の情報処理の自動化,センスメーキングの観点から捉えることを目的としている。本年度は,研究の成果として昨年度提案した教師の熟達化のモデルからさらに洗練されたモデルを検討する中で2つの知見が得られた。
一つは授業者の緊張とリラックスの変動についてである。模擬授業を繰り返し経験する教職課程大学生は授業実施時において徐々に,リラックスも緊張もしない時間帯が増えるが,その時間帯は「集中している」という時間帯であることが確認された。これは,授業者が熟達する中で自分の行動について無意識化する一つの表れとして,自分の緊張やリラックスに意識を向けなくなる,そして子どもの反応や子どもの内面に意識を向けるようになるという解釈が可能なため,自動化モデルの妥当性を示していると考えられる。
もう一つは昨年度報告された授業経験の積み重ねの中で自分自身の授業中の行動のことしか考えられないワーキングメモリをフルに活用する最初の状況から,徐々に自分自身の授業中の行動について自動化およびチャンク化が行われ,ワーキングメモリに余裕が生まれたときに自分の教授行動に対する児童生徒の反応に注意を払うことが可能になったり,教授行動を行いながらの振り返りが可能になったり,センスメーキングが行われるようになり,結果として,自分の教授行動が何を目的とした行動なのかを考え,よりよい教授行動を目指すようになるという変化はSchon (1983)の述べる技術的な熟達者から省察的実践者へと移行していることを示しているものと考えられる。29年度は,大学教職課程で初期の技術的熟達者としての成長とそこから省察的実践者への移行を行うためにどのような指導が可能なのかを検討することが課題になると思われる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

28年度の研究計画は平成26年度,平成27年度と同様の手法を用いて,教職課程の大学生,新任教員を対象にデータを収集し,28年度の新たな試みとして,「熟達とともに意識しなくなった授業実施時の内容」「熟達とともに意識するようになった授業実施時の内容」そしてそれらを意識するようになったのかの理由を示し,大学生と新任教員が熟達していく中で,どのような行為を自動化していく必要があるのか,どのような内容を意識できるようになっていく必要があるのかを探る計画であった。これは,熟達教員が自身の熟達化の過程で経験した自動化とSensemakingの変化を理解した上で教職課程の大学生や新任教員が模擬授業や授業を経験することで,その熟達化が促進されるのかを検討するための準備としての位置づけとされていた。だが,意識しなくなったことは想起されにくいため,インタビューの形式やデータの収集方法について,若干の修正が必要な状況にある。同様に模擬授業に関連するデータについても模擬授業の繰り返しの中で「意識しなくなったこと」は想起されにくいという問題が生じている。そのためデータの収集方法に若干の修正を加える必要がある。
だが,一方で集められたデータが示している意味についての解釈の中で省察的実践家としての成長が教職課程の初期段階には見られないのではないかというアイディアが出され,29年に予定している大学教職課程において模擬授業を行いながら教員としての力量形成を行うためのカリキュラム開発については, 自動化とセンスメーキングをワーキングメモリという観点から捉えるモデルに加えて技術的な熟達がある程度成された後で反省的実践家としての成長が始まるのではないかという仮説が構築されつつある。 最終的な目標である大学教職課程における教員としての力量形成のためのカリキュラム開発に向けて, 研究を継続していく。

今後の研究の推進方策

最初に予定していた研究計画や想定していた教師の熟達過程とは異なる熟達過程の存在が示唆されつつあり,データの収集を継続しつつ,29年度は,大学教職課程の大学生と,新任教員の他に研究会などで交流のある小学校教員などの協力を得て,経験年数の多い教員の教授行動の自動化が進んだ授業中の思考についてもデータ収集を行う。また,教員養成課程において,初期段階には技術的熟達が先行し,その後反省的実践家としての成長が始まるというモデルの妥当性について検討することも視野に入れ,教員養成課程でのカリキュラムモデルを構想していくことを考えている。 さらに, 平成26年度から収集してきたデータをもとに教師の熟達化, Sensemakingを研究対象としている国内外の研究者と交流をしながら研究の発表と意見の交換をしていきたい。

次年度使用額が生じた理由

研究機材の購入計画の遅れと,データ収集のための交通費,バイトの人件費などの支出が年度を超えて遅れているため。

次年度使用額の使用計画

今年度中に大幅な次年度使用額の減額を見込んでいる。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2017 2016

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] 「教える」の本質とは何か ~「教える」を見直す1~2017

    • 著者名/発表者名
      前田康裕・佐々木晃・添田 百合子・井藤 元・河村美穂・遠山孝司
    • 学会等名
      日本教師学学会第18回大会
    • 発表場所
      早稲田大学所沢キャンパス
    • 年月日
      2017-03-04 – 2017-03-05
  • [学会発表] リフレクションと教師の成長― 教師として成長すること(2) ―2016

    • 著者名/発表者名
      浅田 匡・遠山孝司・中村 駿・前田菜摘・高橋知己
    • 学会等名
      日本教育心理学会第58回総会
    • 発表場所
      ンポートホール高松・かがわ国際会議場
    • 年月日
      2016-10-08 – 2016-10-09

URL: 

公開日: 2018-01-16  

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