本研究は、教師やそれを志望する学生による授業内の意図的/無意図的、戦略的/偶発的な行動の意味を明らかにすること、教職を専門性の高い職業と位置づけ、キャリア教育や職業教育の観点で、授業内の行動と、教師経験や成長の関係を明らかにすること、そして、一般的に実践知と呼ばれるものを理論知にして社会に還元することである。 本研究では、教師やそれを志望する学生の授業の中での動きを可視化するために、これまでに開発してきた黒板前の動きを自動的に取得・可視化するソフトウェアを用いる。これにより、教師が意識せずに動いている様子を可視化することができ、実践知として授業者や研究者たちが共有することができる。撮影した授業映像は、授業の雰囲気をフランダースらのカテゴリーシステムを援用したカテゴリー分析をする際にも利用される。フランダースらのカテゴリーシステムには、期間観察・指導、板書などのカテゴリーが設定されていないが、本研究では、それらを設定する。その遷移を、授業の中での動きを可視化したものと統合することで、動きと授業の様子とを対応させたり、次の動きを予測したりすることができるようになると考えられる。そのほか、これらの分析から得られた結果を補足するものとして、授業者へのインタビュー等の調査を実施する。そこから、授業者がどのような手応えを得たのか、それと実際の授業とのギャップは何か、また動きと授業と手応えのギャップは何かへと発展させられると考える。 今年度は、教職課程の学生の模擬授業を中心に分析を進め、動きとカテゴリー分析の結果を取り入れた可視化シートを作成した。それを学生に呈示して、どのような知識や技術を見いだすのかについて研究を進めた。ほか、韓国の授業データを収集したり、これまでに収集しているフィリピンなどのいくつかの国の授業も分析を進めた。
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