本研究は情報系の大学におけるプログラミング演習を想定し、(1)学習者のソースプログラム記述における進捗状況の把握、(2)学習者のプログラムテストにおける意識向上の2点からWeb統合開発環境(WebIDE)を利用したプログラミングの教育支援方法について研究を行った。 (1)について、平成27年度までの研究では、ソースコードの編集過程が進捗状況把握に有効であることを示した。平成28年度の研究では、演習課題では実行例が提示されており、学習者は動作確認のためにその実行例を試すというプロセスに着目した進捗状況把握方法について考察した。境界値や同値クラスに基づいた実行例が多いことから、学習者が試した実行例を調べることで進捗状況がある程度把握できることがわかった。 (2)については、平成27年度に構造を持った複数データのテストケースの評価規準を簡潔に記述する方法を提案した。平成28年度は、実際にWebIDEを利用し、10人程度の規模でテストケース作成演習を行い、提案方法の評価を行った。提案システムによるテストケース作成の効果はある程度認められるが、十分なテストケースを作成するまでの回数の多い学生には必要な値などを明示したより直接的なアドバイスをフィードバックしたり、教員が直接指導したりといった方法が必要になるなどの実用化に際しての課題が明確になった。これまでの成果をとりまとめ、学会ワークショップで発表し、学術論文誌に投稿し、採録が決定した。 そのほか、プログラミング教育支援について、プログラムの誤り修正課題とその正誤判定を行うプログラムの自動生成ツールの提案などを行った。誤り修正課題は意図的に誤りを混入させたプログラムを学習者に正しく修正させる課題であり、コードリディングやデバッギングのスキル獲得に有効である。実際の演習を通して、誤り修正課題の評価を行い、学術論文誌にて発表した。
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