最終年度は、平成27年度に全国の教員対象に実施した通知表所見に対する意識調査(WEBアンケート)をまとめ、日本教育情報学会と教育システム情報学会にて発表した。その結果、自他の書いた所見を半数以上の教員が参考にしておらず、半数程度の教員は教員同士で点検し合うことはないことがわかった。さらに、所見で自他の特徴単語を教えてくれるシステムを約57%の教員が利用したいと回答した。これらより、本研究で進めてきた通知表所見の言語分析による所見記述支援の有用性が改めて示唆された。 本研究全体を通して得られた成果は、ほとんど研究の対象とされてこなかった通知表所見について、1つ目は、分かりやすい独自手法による特徴単語抽出によって記述支援に適する特徴単語が抽出することができたこと。2つ目は、その独自手法によって抽出された特徴単語を提示することにとり、経験のある教員に対して、所見記述支援になり得ることが示唆されたことである。 なお、「よいとこみつけ」については、実証実験校で入手することができたが、分析に値するデータ数が揃わず、今回は見送らざるを得なかった。しかし、通知表所見における分析だけでも教員による多面的な評価を支援することの可能性は示唆できた。 今後は、今までの学習や生活の所見だけでなく、「特別な教科 道徳」も文章による評価(所見)がされることになる。このことからも教員による児童を多面的に評価する能力はさらに求められる。また、大量退職時代により、新任教員の指導が難しくなっている状況の中で、新任教員の所見記述支援も求められる。本研究の成果をより発展させ、新任教員を含めた教員の、児童を評価する力量形成に向けて所見記述支援を進めていきたい。
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