研究課題/領域番号 |
26350353
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研究機関 | 群馬工業高等専門学校 |
研究代表者 |
飯野 一彦 群馬工業高等専門学校, 一般教科(人文科学), 教授 (80159574)
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研究分担者 |
小原 平 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (10266603)
藤枝 美穂 京都医療科学大学, 公私立大学の部局等, 教授 (20328173)
菅原 安彦 国士舘大学, 政経学部, 教授 (30206403)
鈴木 広子 東海大学, 付置研究所, 教授 (50191789)
宮本 節子 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (60305688)
松浦 浩子 福島大学, 経済経営学類, 教授 (70199751)
保崎 則雄 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (70221562)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | SNS / Moodle / 英語コミュニティ / TED |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、SNSを基盤として、英語が媒介する学際的なコミュニティを構築し、参加する英語学習者と教員の有機的なつながりを通して形成される「学び」の諸相を明らかにすることである。 平成27年度では、前年度に構築したシステムの実践から得られた経験知を基にシステムの改良を行い、さらなる実践を行った。そこから得られたデータについて、随時、研究会を行い(5月:早稲田大学、7月:国士舘大学)、実践報告とデータ分析の検討を行った。その結果、ディスカッションの内容を見ると、使用語彙が条件によって異なった。ビデオ視聴のみの場合と視聴した後にネットなどで関連資料を探し、それを発表し、参加者が互いの情報を共有してからディスカッションを行った場合では、前者がビデオに含まれている語彙の使用は認められなかったのに対し、後者では多く見られ、プロトコル全体の語彙が豊富になっていた。比較的英語力を有する参加者は、相手の発言の真意を取る表現など、コミュニケーションの姿勢ができつつあることが示唆された。 また「全国高等専門学校英語教育学会研究論集」に論文として発表した。群馬工業高等専門学校における実践では、参加者は積極的な態度で英語によるディスカッションに参加し、互いに内容に関する情報を基に意見交換をし、コミュニケーションを楽しんでいる様子が伺え、本プロジェクトが概ね順調に運んでいることが確認できた。特に参加者のForumへの書き込み例を見る限り、今までの「教え込む」教育では成しえなかった「流動的な学びのシステム」の可能性の一端が伺えた。 その後も、各研究分担者は所属の機関において実践を継続し、システムの性能や学生のボードへの書き込みデータを収集し、1月の研究会(於:東京慈恵会医科大学)と3月の研究会(於:兵庫県民会館)でそれまでの実践およびデータ解析の報告を行い、次年度の研究方針等について検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は既述した通り、SNSを基盤として、英語を媒介とした「学び」の学際的なコミュニティを形成し、参加者自身がそのコミュニティにどのように参加していくのか、その形成過程の諸相を明らかにすることである。 今年度においては、前年度に構築したシステムを、各研究分担者がそれまでの実践から得られたデータや学習者の意見等を参考に、さらに改良し、実践を継続した。これらの実践報告については、上述の通り、複数の学会において発表することができた。 研究分担者の置かれている教育環境がそれぞれ異なることから、システムへの参加者の人数・収集データ量は、自ずと差があるものの、今後の研究に向けて必要と思われるデータは十分に収集できたと思われる。ただし、学際的なコミュニティ形成という意味においては、まだ学習者が所属機関の枠を出て、他の教育機関との学習者と学びを共有する状況は限定的ではあったが、今年度に構築したシステムは、上述したように、昨年度のシステムから実践を基に改良を加え、学習者がより参加しやすい(ディスカッション・ボードへの英語による書き込みが増加した)ものとなり、SNSを利用した自主的な「学び」のコミュニティ形成により近づいたと思われる。こうした意味において、3年計画の中間年として、本研究のテーマである「『学び』のコミュニティの形成過程の諸相の解明」のための枠組みがほぼできたと思われるので、本研究は概ね順調に進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後はまず、平成26年度、27年度に得られた知見(システム構築、実践、データ収集を含む)を総合的に評価・検討する。研究分担者の所属機関での実践データから、システムの欠点がある場合はさらに修正し、必要があれば再度Webデザイン会社の協力を得て、より学習者がより参加しやすいシステムに改良して実践を行い、データ収集を継続する。来年度の前期中に、今年度と同様に当該の作業を各所属機関で行い、そこから得られたデータを持ち寄り、データ分析に入る。ここで得られたデータと分析結果は、今年度得られたデータと比較分析し、関連学会で発表する予定である。 さらに本研究の最終目的である、学際的なコミュニティ形成への足がかりとして、昨年度までは不十分であった他の教育機関とのオンライン・システムを使った交流(学びの共有)を促進し、今年度まで各教育機関のレベルで行っている実践を、参加教育機関全体にまで広げ、学習環境、学習レベル、専門分野の違い等を超えた「学び合いの場」の形成を促す。その実践を通して、学習者のコミュニティ形成過程の諸相を、書き込みデータからの量的分析、学習者のアンケート調査と深層面接調査による質的分析を行い、コニュニティ形成を促進する要因あるいは阻害する要因を明らかにする予定である。これらは最終的に論文としてまとめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度では、前年度に構築した学習システムの修正を行い、それを基盤として各研究分担者の所属する機関における実践とデータ分析を行ったが、前年度に構築した学習システムに関しては、システムの根幹にかかわる修正はなく、今年度のレンタルサーバー代の他には、インターフェイスの修正、各教育機関が行ったビデオの追加、さらには参加者の新規の登録ということでの改良であったため、計上した物品購入費よりもWEBデザイン会社への支払いが少額であった。またデータ分析に関して計上していた人件費・謝金については、データそのものの量は前年度よりも遙かに増えたが、研究分担者が各自で処理できる量であり、データ分析を依頼するために計上した人件費を使うまでには至らなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度では、参加教育機関における学習者の相互交流を目指したシステムの構築の修正を行い、得られたデータを分析する予定である。そのためのシステム修正をWebデザイン制作会社に依頼する予定であり、また得られたデータの整理は外部に依頼する予定である。そのための費用として当該年度の予算と合わせて使用する予定である。
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