研究課題/領域番号 |
26350360
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
栗原 岳史 東京工業大学, 社会理工学研究科, 特別研究員 (50622544)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 科学技術史 / 原子力開発史 |
研究実績の概要 |
本年度は,日本学術会議の所蔵する史料の調査を行った.同時に,特に重要な科学者について公刊された資料を中心に分析を行ってきた. 日本学術会議は,1949年に設立されて以来,様々な声名・提言を行ってきたが,特に原子力の利用については,1954年4月に出された原子力の利用を平和利用に限り自主・民主・公開の原則を要求する声名に示されるように,原子力の平和利用を強く求めてきた.原子力の安全性についても強い問題意識を持ってきており,日本に最初に導入された商業用原子炉であるコールダーホール型と呼ばれた黒鉛減速・ガス冷却型の原子炉についても,その安全性について調査と提言をってきた.本研究では,コールダーホール型原子炉に関する公開の議論の文書史料を収集し,その分析をおこなってきた. また,本研究では,1960年代半ばにおいてなされた,アメリカの原子力潜水艦の日本への寄港をめぐる議論(原潜寄港問題)についても調査してきた.原潜寄港問題では日本学術会議を含め,多くの科学者たちが論争に加わった.本研究では,原潜寄港問題に関する文書史料を収集し,その分析を行ってきた. これらの研究の成果については,2014年9月に東京工業大学で開催された西脇安展において,会場の展示物や配布用のパンフレットなどで,その一部を発表した.放射線生物学者である西脇安は,1954年3月のアメリカの水爆実験による被害について,いち早く世界に伝えたことで1955年に発表された核兵器の廃絶を求めるラッセル・アインシュタイン宣言の端緒となった科学者であるが,コールダーホール型原子炉の導入と原潜寄港問題の双方においても積極的に発言してきた.西脇安とコールダーホール型原子炉や原潜寄港問題について,本研究の一部を発表することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
はじめての科研費なので,複雑な制度を十分に理解できず,資金の使い方を調べることに多くの時間を費やさざるをえないことが最も大きな遅れの理由のであるといわざるを得ない.研究については,海外出張に行くための事前の準備に時間がかかっていることが遅れの原因である.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,資金の続く限り海外を中心に史料収集を中心に行う.また,資金の使用方法が複雑で非常にわかりにくいため,研究を進める前に多大な手間と労力を費やしているので,手続きを学ぶことも必要だが,同時に,手続きの簡略化も要求していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
海外での資料調査を行うためには十分な事前の準備が不可欠である.先行研究などから,どの文書館・図書館の,どの箱に保管されている,どのファイルを閲覧するかまで絞り,当該文書館や図書館のスタッフと事前に十分な連絡をしてから,実際に訪問することが必要である.今年度は,そのような水準まで事前に絞ることができていなかった.
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次年度使用額の使用計画 |
海外を中心に史料収集を行うための旅費として使用する.滞在中に必要な携帯用の機器類(カメラ,スキャナ,軽量PC,その他データ保存用のメディア類)の購入を随時行っていく.
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