研究課題/領域番号 |
26350360
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
栗原 岳史 東京工業大学, 社会理工学研究科, 東工大特別研究員 (50622544)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 科学史 / 原子力 / 科学者 / 米国 |
研究実績の概要 |
本年度は,昨年度に引き続き,米国から日本への原子力技術導入と,当時の科学者たちが行った社会的運動との関わりを中心に,文献や各種史資料の調査を行ってきた.本年度では,1960年代半ばにおいてなされた,アメリカの原子力潜水艦の日本への寄港をめぐる議論(原潜寄港問題)を中心に調査を行った.原子力潜水艦の日本への寄港は,都市部へ原子炉を設置することと同じであるとして,日本学術会議を含め多くの科学者たちがその安全性について問題を提起し,多くの国民・市民を巻き込んだ大きな社会問題となった. 本年度の前半では,日本に存在する原潜寄港問題に関する文書史料を収集し,日本の科学者たちの発言や行動を中心にその分析を行ってきた.その研究成果を,2015年5月31日に大阪市立大学で開催された日本科学史学会年会で発表した.また,この科学史学会年会では,2014年9月に東京工業大学で開催された「西脇安展」のために準備した研究成果の一部が発表された.2015年7月21日に,東工大で開催された科学史技術史の研究者で運営される研究会である「火曜日ゼミ」で,その研究成果を発表し,研究者たちから今後の研究課題や研究の展望について多くの助言を受けた. 本年度の後半では,原潜寄港問題や,日本への原子力技術の導入について,アメリカ側がどのように見ていたのかを調べることを目標とし,そのための文献資料の調査と,米国メリーランド州の国立公文書館の所蔵する文書史料の調査を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は公文書資料の調査を行うためまとまった時間を必要とするが,大学教員(非常勤)としての教育業務に時間がとられるため,研究に十分な時間を割くことができなかった.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は,史料調査をどのくらい行うかに,その成否のほとんどがかかっているといえる.夏季,および春季の間に,米国国立公文書館を中心にして,研究史料を所蔵する機関に日程の可能な限り長期間出張するようにする.一般的に米国の国立公文書館や国立議会図書館は,メールや電話での問い合わせには,事実上,ほとんど応じてもらえないので,直接現地に出向く必要がある.そのために,夏季と春季に日程を確保できるようにする.出張に出発する前にも,できる限り現地から史料に関する情報を収集したり,現地での調査の経験のある人や類似の分野の研究者に,どこにどのような史料が所蔵されていたのかについての情報を収集し,現地での調査を行いやすくする. また同時に次のことも行う.予算の使用方法がきわめて複雑で,しばしば物品の購入が認められず,私費で支払わねばならなくなっている.生活が困窮しているためそのような事態をさけるために,何を購入でき何をできないのか,その都度聞いても具体的なことがわからず,時間がかかり,確認するための事務作業にとられる時間が非常に多く,多大な時間が無駄となっている.この複雑でその都度確認せねばならないシステムを何とかしないかぎり,研究は進展しない.使い側の立場に立った改革を求めていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
米国の公文書史料を調査するために渡航と滞在の費用とする予定であったが,十分に時間を確保できなかったため,使用できなかった.
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次年度使用額の使用計画 |
米国の公文書史料を調査するための渡航と滞在の費用とする.
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