研究課題
基盤研究(C)
本研究においては,ルネサンスの学問論を研究した.ヨーロッパに大学制度や古代の知が広まりつつあった時代において,F. ペトラルカ,C. サルターティ,そしてF. ベイコンは,人文主義の流れを形成しつつ,知による知の批判を展開した.とくにペトラルカは,従来,宗教的視点からの哲学批判を展開したことで知られてきたが,実際は哲学の歴史と現状についてよく認識しており,当時まだ初歩的な紹介しかなされていなかった懐疑主義的議論に注目しつつ,学問に関する独自の理論的立場を築いていたことが明らかになった.
科学史
一般に,学問論の歴史は未開拓の領域であるが,今日の科学技術文明の状況を踏まえるならば極めて重要な領域である.知的探究の本質,およびそこに内在する問題についての理解する上で,ヨーロッパ学問論の長い歴史について認識することが役立つだろう.ルネサンス期の学問論に登場する,認識論や懐疑論,諸学の存在論的検討などの思考を発掘し,その主張の現代的射程を明らかにすることで,今日の学問論や科学論をより実り多いものにできるだろう.