研究課題/領域番号 |
26350366
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研究機関 | 九州産業大学 |
研究代表者 |
黒田 光太郎 九州産業大学, 基礎教育センター, 特任教授 (30161798)
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研究分担者 |
永田 英明 東北大学, 学術資源研究公開センター, 准教授 (20292188)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 黒田チカ / 女性化学者 / 女性理学博士 / 女子高等教育 / 女子高等師範 / 東北帝国大学 / お茶の水女子大学 / 理化学研究所 |
研究実績の概要 |
東北大学史料館に現在は所蔵されている黒田チカの遺品である「黒田チカ資料」の分類整理を行った。これは昨年度に続いて、研究分担者の永田が主に担当し、研究補助者の協力を得た。史料館では資料目録の作成が進行中で、将来的にはデジタルアーカイブとして公開できるよう準備している。黒田チカ資料には相当数の眞島利行教授からの手紙が多数あることを確認し、眞島教授との長年に渡る交流の一端を知ることができた。このことは2016年3月に開催した研究会で永田から報告された。 黒田チカの女高師入学以前の資料によって、高等教育を学ぶまでの生い立ちを調査し、とくに生地・佐賀市における調査を行った。黒田チカの父平八に関して、佐賀市の研究協力者によって、佐賀米穀取引所の監事、理事をした平八の活動が掘り起こされ、最初の女子学生誕生には、開明的な佐賀という環境が大きく影響していると考えられる。 黒田チカ関係の資料を所蔵しているお茶の水女子大学において、資料の新たな保管場所の所在を確認するとともに資料を閲覧した。またデジタルアーカイブを利用し、黒田チカの女高師およびお茶の水女子大学における生徒、研究生および教員としての活動について、お茶の水大学の研究協力者とともに調べた。 女性化学者の先達には研究環境の確保が重要であることに注目し、理化学研究所における研究活動について調べた。とくに、戦後になってケルセチンの基礎研究から、高血圧予防薬として市販された「ケルチンC」の開発過程を調べた。 2017年度に創立100周年を迎える理化学研究所で2016年3月に開催された「理研の歴史講演会」において、「女性化学者の先駆けへの道程-黒田チカの軌跡」を講演した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東北大学の「黒田チカ資料」の書簡を中心とした目録が完成し、さらに資料全体の整理を進めている。佐賀における調査で、黒田チカの父親である平八のことが明らかになってきた。
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今後の研究の推進方策 |
最初の女子学生誕生に関して、生地佐賀における状況を特に父親である黒田平八の人となりの調査をふまえて、教育、人間、社会の観点から、新たな分析・考察を行う。女性研究者として自己を確立し、英国留学を経て、女性で最初の化学分野での理学博士となるまでを、科学とジェンダーの視点を重視しながら、多面的に調査研究する。とくに、研究環境の確保が女性研究者にとっては重要な課題であったことに注目する。 女性化学者として、多くの天然色素の研究を展開した過程について調査研究するともに、高血圧予防薬「ケルチンC」の開発過程を調べ、基礎研究から応用研究への展開を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進行状況から、次年度に連携研究者、研究協力者の協力をよりあおぐことになると考え、本年度の支出をおさえて、そのための予算を確保した。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度である次年度は、東北大学での「黒田チカ資料」の整理をより進めるために、謝金を増やす。
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