研究課題/領域番号 |
26350369
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研究機関 | 東京工業高等専門学校 |
研究代表者 |
河村 豊 東京工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (10369944)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 戦時科学史 / 電子技術史 / 軍事研究 / 科学者動員 / 軍民両用技術 |
研究実績の概要 |
平成26年度計画にある3つの課題をそれぞれ進めた. (1)軍民両用科学技術概念の分析については,「科学技術政策と安全保障」というタイトルで平成26年11月8日に報告(非公式の研究ミーティング).この報告での到達できた議論の一部は,NHK名古屋放送局の番組(平成27年1月30日放送)「ナビゲーション:戦争に翻弄された科学者」にて,戦時中の技術と近年の技術との比較に関わらせることで,一般視聴者向きに,情報発信を行うことができた. (2)占領期の軍民転換問題の調査では,戦時中に陸海軍の技術士官(主として電波技術関係)500名程度を対象に,回想録等の資料を系統的に収集,敗戦直後にどのような職業に転職(個人における軍民転換)したかを予定通りのペースで進めることができている. (3)戦中から戦後におけるエレクトロニクス史の再構築にに関しては,静岡県島田市で発掘された「牛尾実験所遺跡」の調査が予想以上に進展したため,アメリカ公文書館での資料調査の予定を変えて,島田市での調査,関連する日本国内での同種の海軍技術遺跡の調査を優先して行なった.特に,同施設に関わる,新資料の収集,関係者へのインタビュー,関連施設の調査,遺跡で発見された遺物の調査を行った.これらの調査の成果の一部は,「海軍「Z装置」開発計画再考-牛尾実験所遺構発掘経緯とA装置の考察-」と題した論文として投稿した(平成27年5月刊行予定).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予想以上に,牛尾実験所遺跡跡の調査が進展したため,この遺跡および関連施設跡等に関して,集中的に調査することに予定を変えた.このため,アメリカ公文書館での資料調査を取りやめた.その一方,戦争遺跡の歴史的価値付け,戦争と科学を巡る議論などについて,同遺跡を調査した研究者との情報交換や,報道機関からの質問に答える準備の中で,新たな知見を得ることができた. 静岡県島田市教育委員会主催した,同上遺跡の調査報告会(2014年11月9日開催)では,「69年ぶりに開いたタイムカプセル-旧海軍の牛尾実験所遺跡からのメッセージ-」と題した,市民向け講演を行うことができ,これまでの同遺跡関係の調査,および戦中および戦後のエレクトロニクス発展史という本研究のテーマについて,途中経過をまとめることができた. また,共同研究者の新間雅巳氏との数回の調査活動,および情報交換により,旧海軍技術に関わる当事者,研究者とのインタビュー,および情報交換が行えた.こうした調査の中で,これまで不明であった資料の存在可能性に気づくこと,戦時中の科学者の兵器開発に関わる分析方法について,新しい分析視角が存在しうることについて理解が深まった.
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今後の研究の推進方策 |
占領期日本における電子技術史を事例として,軍民両用科学技術に関して分析する基本方針は,1年目の調査により,調査の意義がさらに明瞭になった.課題としては,占領期の分析のためには,(1)戦時中の研究動員に関わる実証的研究が不可欠であること,加えて,(2)占領期が終了した1950年代における「再軍備」の問題も調査を行うことが必要であることが分かった.また,軍民両用科学技術に関わる概念分析には,現代の軍事技術,民事技術に関わる調査も,当初の予定よりも範囲を広げて行う必要を感じた.機会があれば,関連施設の見学も実施することとし,当初の予定であった,オーストラリアでの資料調査を中断し,国内調査を充実することとする.
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次年度使用額が生じた理由 |
国内での遺跡調査(旧 第二海軍技術廠牛尾実験所遺跡)を重点的に行うべきであるとと判断したので,アメリカでの資料調査などを中断した.このため,海外旅費に該当する部分で,残金が出た.
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次年度使用額の使用計画 |
今年度も,引き続き国内での関連施設の調査を重点的に行うことに変更したので,当初の予定であったオーストラリアでの資料調査は中止し,国内での関連施設見学,資料のディジタル化に費用を充てる予定である.
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