研究課題/領域番号 |
26350381
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研究機関 | 京都造形芸術大学 |
研究代表者 |
岡田 文男 京都造形芸術大学, 芸術学部, 教授 (60298742)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 漆工技法 / 東アジア / 青松塚古墳 / 勝負砂古墳 / 東大寺二月堂修二会 / 木目塗 / 木村定三コレクション / 愛知県美術館 |
研究実績の概要 |
平成26年度において考古資料3件、伝世品2件の漆工品調査を行った。 考古資料では京都大学考古学研究室が昭和22年に発掘調査した大阪府茨木市所在の5世紀後半の青松塚古墳より出土した鉄製の馬具類について、鉄製品の表面に付着した漆塗膜・繊維製品から試料を採取し、エポキシ樹脂包埋と研磨による顕微鏡標本を作製して、漆工技法の調査を行い、報告書作成を行った(科研報告書未刊)。2件目は岡山大学が2007年に発掘した勝負砂古墳出土の馬具に付着した漆塗膜をはじめとする有機質遺物のうち、国立歴史民俗博物館に保管されている資料について試料採取を平成27年2月に行った。該資料について今後2年以内をめどに分析結果を報告する予定である。3件目は韓国金海市に所在する大成洞古墳群の88号墳、92号墳より出土した漆製品の調査であり、平成26年6月と12月に現地に赴き、試料採取を行い、日本において一部の試料の顕微鏡標本を作製し、結果を金海市に報告した(報告書作成中)。 伝世品について1件目は東大寺二月堂修二会において食堂作法で用いられる木鉢の塗装技法を調査したものであり、内容の一部を平成26年度の日本文化財科学会大会でポスター発表するとともに、『漆工史』37号(平成26年11月刊)に報告した。2件目は愛知県美術館に収蔵されている木村定三コレクションに含まれる漆工品の中の中国製の「木目塗盆」について、平成26年10月に五島美術館で「存星展」が開催された折に出陳され、未知の技法として注目されたことから展覧会後に塗装技法の調査依頼があり、分析を行った。分析の結果、展覧会当初「犀皮」の技法と解説されたが、実際には「犀皮」ではなく、蜜陀絵の技法であることが判明し、結果を『愛知県美術館研究紀要 木村定三コレクション編』に報告した。以上、当初の目的である「東アジアにおける漆工技法の系統的研究」を着実に進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では漆工品の調査を日本国内、韓国、中国において実施する予定であった。日本国内、韓国においては比較的順調に調査を行うことができたが、中国において調査を行う機会がなかった。その点において、予定よりも遅れが生じた。また、中国での調査が進まなかったことから、国外旅費の予算執行が当初の予定通りに進まず、予算の一部を翌年度に繰り越すことになった。
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今後の研究の推進方策 |
国内調査のうち考古資料については岡山大学が発掘調査した勝負砂古墳出土の馬具に付着した漆の技法調査を継続する予定であり、試料点数が200点ほどになるため、今年度は顕微鏡標本の作製と顕微鏡写真撮影が主要な作業となる。国外の調査について、韓国金海市大成洞古墳出土の漆製品の試料分析を継続するとともに、今年度は中国陝西省西安市と共同で、同市内より出土した漆製品の調査を行う予定である。 伝世品では東大寺二月堂の修二会の食堂作法で用いられた漆工品のなかの「練行衆盤」について、東大寺とそれ以外の美術館に収蔵されている製品の銘文調査を行い、調査結果を『漆工史』に発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度には他者の科研費で国内調査を行った回数が5回になり、本科研費での国内調査件数が2件と少なかった。さらに当初予定していた中国での漆工品調査をまったく行えなかったため、旅費及び調査費の執行率が低くなったために次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度の韓国、中国における漆工品調査の回数を増やすことと、報告書作成のために顕微鏡標本作製のための人件費を増加すること、試料の年代測定等の増加を計画している。
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