研究課題
地震による文化財の被害を減少させる方法の一つとして小型免震装置が有効であると考えられるが、費用が多額となることから十分に普及していない。この障害を解消し、その普及を促進する手段の一つとして ①機構が単純であり、安価で制作が可能な簡易小型免震装置の開発 ②振動試験による開発した装置の特性把握 を行ってきた。最終年度は以下の2点を中心に研究を進めた。(1)応答計算 被害を引き起こした大地震の観測記録を入力波として、開発した装置の応答計算を実施した。用いた主な地震は、1968年十勝沖地震(八戸)、1995年兵庫県南部地震(JMA神戸)、2004年新潟県中越地震(小千谷)、2016年熊本地震(益城)である。最大加速度応答と最大相対変位はトレードオフの関係として現れ、摩擦係数が小さい場合、最大加速度応答は小さく、対照的に最大相対変位は大きくなる。最大加速度応答は入力地震動に依存せず摩擦係数の増加にほぼ比例して大きくなるが、最大相対変位振幅は摩擦係数の増加に伴い小さくなるけれども、その変化は入力地震動により異なることを示した。(2)結果の評価 転倒限界加速度400Galの花瓶を展示文化財の一例として、開発した簡易免震装置に設置した状況下で振動実験を行った。振動数1.5Hz、最大加速度振幅600[Gal]の正弦波を用いた場合、装置がない状況下では花瓶は転倒したが、装置上に花瓶を設置した場合では、花瓶は僅かにロッキング運動を示したが転倒には至らなかった。そこで、地震の観測記録を入力波として振動実験を実施した。入力波に対し応答波形は十分低減され、花瓶が転倒することはながった。また、数値解析の結果と比較をしても、概ね近い値を示した。この簡易小型免震装置に置く異なった転倒限界加速度の器物、重量やスケールが変化することによる影響などを、振動実験や数値解析で明確にし汎用性を示すことが重要になる。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件)
文化財保存修復学会誌
巻: Vol. 60 ページ: 10-21
Information
巻: Vol. 19,No.6(A) ページ: 2039-2044
巻: Vol. 19,No.6(B) ページ: 2341-2348
巻: Vol. 19,No.6(B) ページ: 2349-2356