研究課題/領域番号 |
26350385
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研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
沓名 貴彦 独立行政法人国立科学博物館, 理工学研究部, 研究員 (20574148)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 金属生産関連遺物 / 現地調査 / 非破壊分析 / 非鉄金属生産 |
研究実績の概要 |
H28年度は、生産関連遺物の現地調査対象に3箇所選定し調査を実施した。対象遺跡は、27年度の予備調査で新たに調査対象候補に挙げた北海道の上ノ国勝山館跡と、福岡県の博多遺跡群、大分県の中世大友府内町跡である。現地調査において、勝山館跡では坩堝の確認以上に金属製品やその半製品などの生産関連遺物を多数確認し、その出土事例の特異性が際立つことを確認した。博多遺跡群と中世大友府内町跡は、以前から調査を実施しておりさらに大友府内町跡では新たな発掘調査が行われていること、博多では以前の調査から進展する可能性から追加調査の必要性が生じたためである。その結果、詳細調査実施の必要性を有する遺物を多数確認し、大きな成果を得ることとなった。 借用調査は、昨年度までの現地調査実施済遺跡から選定して堺環濠都市遺跡と多気北畠遺跡、28年度に現地調査を行った上ノ国勝山館跡、博多遺跡群について実施した。その結果、堺環濠都市遺跡と多気北畠遺跡では金銀粒子や他金属の付着などを確認し、生産内容の解明に繋がる情報を得た。これらについては今後データをさらに詳細に解析検討を行い、その技術内容の解明を進める。上ノ国勝山館跡では、坩堝片等土製品の分析以上に金属製品や半製品等の特異性の解明のため分析を実施した。材質はほとんどが銅であったが、特徴的なものもみられ検討を要するため、調査継続中である。博多遺跡群では、付着物の構造について詳細調査を実施し、これまでにない知見を得ている。 また、関係者から金属生産関連遺物の出土している重要遺跡の紹介が多数有り、現地調査の検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
28年度は、地理的・時代的に重要遺跡といえる北海道上ノ国勝山館跡について、現地調査及び借用調査を行い成果を得た事が挙げられる。また、前年度に現地調査した2カ所の借用調査からも大きな成果を得ており、各地域での技術の相違について検討を行うデータを集成できている。ただし、現地調査や借用調査に要する時間が予想以上に必要であり、その成果を充分発表できていないことが反省点である。
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今後の研究の推進方策 |
H29年度が延長した最終年度に当たるため、現地調査、借用調査をさらに積極的に実施し、日本各地の中世末の非鉄金属生産の様相を明らかにすることに注力する。またその情報を遺跡発掘担当者との共有や、関係者への情報発信を行う。本研究の対象とする時期は、日本だけでなくヨーロッパ・東アジアの激動期に当たり、海外へも目を向けつつ金属やその生産技術について明らかにすることに留意したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
H28年度は調査の実施については、ほぼ予定通りに行ったものの、年度前半の業務の多忙により、計画以上に前進する見込みであったが予想以上にできなかったこと、また備品の購入等を現在の状況から見合わせたことが挙げられる。
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次年度使用額の使用計画 |
延長したH29年度に集中的に現地調査と借用調査を実施するほか、蛍光エックス線分析装置用標準試料の購入、研究会などを実施して関係者相互の研究成果発表を行い、研究成果を取り纏める予定である。
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