研究実績の概要 |
中国由来の仏像彫刻の用材観と日本の仏像彫刻の用材観にどのような類似性や相違性があるのかを識るために、本年度は2016年9月に米国のボストンを皮切りに、ウォーチェスター、クリーブランド、ニューヘブン、プリンストン、ニューヨークと移動し、下記の9か所の美術館を訪問し、それぞれの美術館の協力により合計21体の中国由来の木彫像から26試料の提供を受けた。 1.Museum of Fine Arts, Boston, 2.Isabelle Stewart Gardner Museum, 3.Worchester Art Museum, 4.RISD Museum, 5.Harvard Univ. Art Museum, 6.Cleveland Museum ofArt, 7.Yale University Art Galleries, 8.Princeton University Art Museum, 9.Brooklyn Museum, NewYork. これら仏像彫刻につき、顕微鏡標本を作製し、用材の樹種同定を行った結果、キリ属製木彫像:8体、ヤナギ属製木彫像:7体、ビャクダン製木彫像:2体、トチノキ製木彫像:1体、サワグルミ属製木彫像:1体、環孔性木彫像:1体であることが判明した。本研究課題前に、ヨーロッパの美術館およびアメリカ・メトロポリタン美術館から提供を受けた仏像彫刻の樹種同定結果と比較し、キリ属とヤナギ属が多用されていることおよびビャクダン製の仏像彫刻が検出されたことは以前の結果と共通していた。その一方で、トチノキ製やサワグルミ製の仏像彫刻が検出されたことは初めてであり、今後、中国由来の仏像彫刻の用材観を製作時代や地域を考慮して解析していくうえで貴重な資料となりうると考えている。
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