本研究は、博物館体験という視点に立脚し、来館者自身による展示室での「デジタル写真記録」が展示室での体験を省察するためのよい手法・ツールになることを明らかにするとともに、このツールを活かした学習プログラムを開発し、学校団体等による展示見学活動に新たな視点をあたえることを目的としている。また、来館者自身が博物館体験コンテキストを把握・認識することが学びになるという仮説を立て、実践的に検証を行う。そのために、来館者の展示見学における博物館コンテキストを認識するツールの開発・構築と、そのツールを活かした学習の開発をすすめた。 最終年は、主な取り組みとして、(1)ポートフォリオづくりのツール改善・整備、(2)見学実習等でのポートフォリオづくりの導入、(3)小学校等との連携による実践、をすすめた。 展示見学ポートフォリオづくりは、生命の星・地球博物館の地球展示室および生命展示室での見学をふまえ、デジタルカメラによる撮影画像を時系列に並べたシートに自分自身のメモを記し体験を振り返るものである。そのシートをもとにした仲間との対話は、さらなる気づきや問いを促すものとなっている。 プログラムの試行実践として、博物館実習における学生による展示見学、教員向け講座の実施、見学実習授業などを行った。従来の展示見学実習を派生させ、外部協力での児童・生徒・学生による展示見学ポートフォリオ作成の試行は多様な実践パターンの把握につながった。30名程度を対象とした場合、4時間の展示体験学習プログラムとして、デジタルカメラ記録法&展示見学ポートフォリオづくりが可能である。 小学校との連携として、近隣小学校2校と展示見学ポートフォリオづくりを取り入れた授業実践をすすめた。1時間程度の展示見学と学校教室でのポートフォリオづくりという組み合わせでの実践となった。
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