研究課題/領域番号 |
26350396
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研究機関 | 大阪市立自然史博物館 |
研究代表者 |
山西 良平 大阪市立自然史博物館, その他部局等, その他 (70132925)
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研究分担者 |
佐久間 大輔 大阪市立自然史博物館, その他部局等, 研究員 (90291179)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 対話と連携の博物館 / 公立博物館 / 地方独立行政法人 / 博物館経営 |
研究実績の概要 |
本研究の主題である「対話と連携の博物館」の総括については、日本博物館協会と連携して取り組みを進めている。2016年1月21-22日に東京国立博物館で開催された協会主催の研究協議会(平成27年度、テーマ1)『運営の多様化と博物館登録制度の在り方―「対話と連携の博物館」の総括(3)』において、山西が「博物館登録制度の在り方に関する調査研究委員会」の論議の状況について」、また佐久間が「博物館総合調査から見た直営館と中規模外郭団体運営館の現状と課題について」それぞれ講演した。 緊急課題である公立博物館の地方独立行政法人化については、2014年度に引き続き第2回~第4回の「公立博物館の地方独立行政法人化に関する研究会」を開催した。そのうち第2回と第3回については、大阪市が3月に公表した「文化施設(博物館施設)の地方独立行政法人化に向けた基本プラン(素案)」の内容を博物館関係者の間で広く共有するために、公開フォーラムとしてそれぞれ東京、京都において開催し、多数の参加者を得た。第4回の研究会では「公開フォーラムの振り返りと論点整理」および「国の博物館独立行政法人の運用と課題」を議題として8名のメンバーにより論議した。 2015年度に計画していた「博物館をめぐる市民団体サミット」については、11月28-29日に大阪市立自然史博物館において「友の会サミット2015ユーザーコミュニティが博物館を活性化する道を探る」を大阪市立自然史博物館・西日本自然史系博物館ネットワーク・大阪自然史センターの共催で予定通り開催した。外部講師10名を招聘し、60名の参加者が交流を深めた。さらにミュージアムショップを通した博物館と利用者のよりよい関係を探ることを目的に「大阪市立自然史博物館のミュージアムショップに関するアンケート」を実施している(第1回を2014年3月に実施済み、第2回を6月に予定)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年ICOM(国際博物館会議)大会の京都開催が昨年6月に決定され、今後日本の博物館の在り方が国際的にも注目されるようになることから、博物館登録制度の見直しや新たな博物館振興策の推進に向けた機運が高まっている。このような中で「対話と連携の博物館」の総括と新たな博物館運営の指針構築を探るという本研究の課題設定は時宜に叶ったものであった。「対話と連携の総括」をテーマとして日本博物館協会が3箇年にわたって開催した研究協議会を通じてさまざまな実践例が集約され、また総括の論議も積み上げられている。さらに本科研費事業として2015年11月に開催した「友の会サミット」は、「対話と連携」の領域をユーザーコミュニティ相互の交流にまで拡げていこうとする画期的な場となった。ただし論議は緒に着いたばかりであり、今後の深化が求められる。また、来館者と博物館をつなぐミュージアムショップの意義についても博物館学的な検討に着手しているところである。 一方、緊急課題として検討してきた「公立博物館の地方独立行政法人化」については、政令改正内容および大阪市の基本プランの共有という所期の成果を得ることができた。しかし論議はそれにとどまらず、指定管理者制度による管理代行や直営も含めた博物館の多様な運営形態の比較検討といったテーマにまで発展しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
「友の会サミット」については、前年度の成果を踏まえつつ、続編を2016年度に開催する予定である。「公立博物館の地方独立行政法人化」に関する研究会についても、6月に第5回の会合を開催し、多様化する運営形態の現状に視野を拡げ、それらの比較・検討の必要性について協議する予定である。ミュージアムショップの利用者アンケートは6月に再度実施し、その結果を取り纏めて公表し、博物館にとってのミュージアムショップの位置づけ、意義について問題提起を試みる。 2000年に日本の博物館運営の指針として策定された「対話と連携の博物館」は国内の博物館の事業・運営の改善に大きなインパクトを与えてきたが、全体的にその後の財源難や施設の老朽化などにより博物館運営のきびしさが一層深刻になるとともに、利用者をはじめ設置者、行政など社会からの博物館に対するニーズの多様化が著しい。本研究においては、日本博物館協会による「対話と連携の博物館」の総括の取り組みに参画しつつ、独自にユーザーコミュニティの相互交流の課題を提起するとともに、運営形態の多様化についても公立博物館の地方独立行政法人化を契機として論議を進めてきた。これらの検討の結果からも、今日、日本の博物館には新たな指針の策定が必要とされていることは明らかである。本研究の取り纏めとして、このような問題意識のもとに、研究に参画された方々による提言を中心とした報告書を作成する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
「対話と連携の博物館の中間総括」並びに「公立博物館の独立行政法人化」をテーマとした本研究における論議内容を印刷する予定であったが、それぞれの事業が継続・発展しているために、印刷費および事業費の一部の執行を最終年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
繰越金は「友の会サミット」(続編)および「公立博物館の地方独立行政法人化に関する研究会」の開催のために必要な経費、並びに本科研費事業を取り纏める報告書の作成に必要な印刷費じ充当する。 今年度支給される金額については、成果発表のための学会等への参加費・旅費および上記事業の実施に必要な事務的経費に充てる予定である。
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