研究課題/領域番号 |
26350397
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研究機関 | 北九州市立自然史・歴史博物館 |
研究代表者 |
真鍋 徹 北九州市立自然史・歴史博物館, 自然史課, 学芸員 (90359472)
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研究分担者 |
富岡 優子 北九州市立自然史・歴史博物館, 歴史課, 学芸員 (20508957)
中西 義昌 北九州市立自然史・歴史博物館, 歴史課, 学芸員 (50633020)
御前 明洋 北九州市立自然史・歴史博物館, 自然史課, 学芸員 (70508960)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 博物館学 / 自然景観 / 文化景観 |
研究実績の概要 |
<都市近郊の山林景観の復元>研究対象域における異年代の空中写真から、相観植生図を作成した。また、収集した当該域内における1970年代の風景写真・記念写真(写真とする)が撮影された地点を踏査によって確認し、それら地点における現在の景観を撮影した。これら同一地点の異年代における空中写真・植生図・写真を用いて当該地域の植生景観の変化パターンを把握した。さらに探査した文献の分析結果等をもとに、把握された景観変化が生じた理由を明らかにした。 <都市域の里山景観の復元>調査対象域における昭和初期の里山景観の復元に活用できる資料の存在を確認した。景観復元および展示会への活用に向けた検討を実施している。 <山城景観の復元>研究対象域における幾つかの城跡の調査図を作成した。また、前年度に踏査した山城跡周辺域の地質図、地形図、空中写真から得られる情報を検討した結果、山城が築城された地点は、他地点より浸食を受けにくい地質的特徴を持った地点である可能性が示唆された。 <劣化フィルムの補修>収集した昭和初期の風景等が記録された劣化した16mmフィルム等の整理・データベース化を完了させ、それら劣化ファイルムの一部の補修を実施した。その際、フィルムとしての複製製作に加え、記録されていた画像情報のデジタルデータへの変換も実施した。これによって、劣化したフィルムを博物館資料として修復・保存する手法および研究や展示用に活用する手法を確立させることができた。 <成果公開のための展示会の準備>都市近郊の山林景観の復元作業で収集・作成した上述の空中写真・植生図・写真を用いて、景観の変遷とその理由を解説する一般市民に向けたワークショップを伴った講演会を3回実施した。その結果、多くの市民には、景観変化のパターンの知覚化には、空中写真や植生図に比べ、写真の方が効果的であることが判った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
復元した都市近郊の山林景観などのGISを用いた景観解析に際し、地域の博物館でも実施できる手法を構築するため、高価なGISソフトではなく、QGISなどの汎用性が高くかつ安価(無料)で入手できるソフトを使用することとした。当研究担当者が当該ソフトの活用に慣れていなかったため、ソフト使用方法のマスターや、当該ソフトに適した植生図・土地利用図の作成方法の検討にかなりの時間を費やしてしまった。このため、計画より少数の植生図や土地利用図しか作成できなかった。 また、劣化フィルムの補修のための手法はほぼ確立することができたが、非常に劣化したフィルムの補修方針の検討にかなりの時間が必要であった。また、寄贈いただいた大量のフィルムの撮影テーマや撮影時期などのデータベースが整っていなかったため、本研究に適した情報を内包していると考えられるフィルムの選定にもかなりの時間を費やすこととなった。さらに、劣化フィルムの複製に用いる予定であった16mmフィルムが製造中止となったため、相対的に高額の35mmフィルムを用いることとした。これらのため、当初計画よりやや少ない量のフィルムしか補修ができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに実施した景観復元手法等を再検討し、復元する景観の増加および復元精度の向上を行い、論文による研究成果の公開を進展させる。あわせて、研究対象域における自然・文化景観の変遷パターンと変遷をもたらした要因をより詳細に整理する。さらに、本研究で構築したデータベースを用い、既存の類似研究との比較を行うことで、本研究地域と他地域との景観変遷などの共通性や異質性を明らかにする。 また、景観復元に用いた様々な資料の博物館資料としての価値を洗い出し、研究終了後も有効に活用するための収蔵方法やデータベース化の手法を検討する。 加えて、本研究成果の市民への公開に向け、研究成果を判り易く可視化・知覚化するための展示手法の検討を深め、市民や近隣大学の研究者とも連携し、魅力的な展示会を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
劣化が非常に進行したフィルムの補修方針の検討・確立にかなりの時間が必要であったこと、複製用として想定していた16mmフィルムが製造中止となり割高な35mmフィルムを用いざるを得なかったことなどのため、劣化フィルムの補修が計画よりも少量しか実施できなかった。また、植生図や土地利用図の作成効率が悪かったため、景観復元に必要な空中写真の購入が計画より少量になった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は劣化フィルムの補修が計画よりも少量しか行えなかったが、補修を完了したフィルムには本研究課題の実施に適した情報を内包したものが存在していることが判明した。また、寄贈いただいた劣化フィルムのデータベース化が完了したため、平成29年度は本科研課題に適した情報を内包していると考えられたフィルムの補修を短期間に集中して実施する予定である。 また、都市近郊域の里山景観の復元対象地域において異なる年代に撮影された空中写真を購入し、当該地域の植生図や土地利用図を作成する予定である。これによって、植生図や土地利用図を用いた景観構造の解析で得られた里山景観の変化パターンと解析が終了している里山の群集動態との関連性を検討する。
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