研究課題
本課題では、石材や岩盤などの壁面劣化に関与する風化機構の解明と、削剥部分の形態の定量化、岩屑生産量の定量把握を目的として研究を行った。主たる調査地点は、埼玉県吉見町に所在の史跡・吉見百穴の地下軍需工場と、ベルギー国オーバル町に所在の修道院である。吉見百穴は、凝灰岩体を掘削した素掘りの坑道跡を対象として、坑道入り口付近から奥方に向かい地点A~Eを設定し、1年超にわたり定期観測を行った。その結果、以下のことが示された。1) 地点A、B、Cの全てで下部が削剥されノッチ状を示し、そのくぼみの上限高さは地点A、B、Cの順に高くなっていたが、地点D・Eではノッチはみられなかった。2) 各地点の含水比には大きな変動はなかったものの、壁面の侵食量が大きい地点ほど地温(気温からの換算値)が上昇し、湿度が低下しやすい環境である。3) 塩類風化によって生産される岩屑量は地温が上昇する時期と湿度が低下する時期に多い。4) 岩屑に含まれる主要な析出塩は石膏であり、その析出は夏場に多い。これらの結果より、最高地温TWmaxと最低湿度RHminを用いた乾燥化指数α=TWmax/RHminを考案し、塩溶液の供給量と乾燥しやすさのバランスに規定されて塩類風化が起こっていることを定量化した。また、岩石強度(UCS)と乾燥化指数αとの比で示されたパラメータα/UCSと比例関係をもつこともわかった。ベルギーのオーバル修道院も、主として塩類風化によりその壁面が風化し、剥落している。吉見百穴と同様、風化箇所の空間的分布および風化に伴う剥落の速度は、温湿度環境に影響していることが示された。その風化箇所の面積と深さを、TLSとSfM-MVSにより測定し、得られたデータから点群とデジタル標高を含むDEMを作成して削剥体積を求めた。その結果、3年の研究期間中にミリメートルないしセンチメートルオーダーの変化が検出された。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (12件) (うち国際共著 7件、 査読あり 12件、 オープンアクセス 12件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (25件) (うち国際学会 19件、 招待講演 1件) 図書 (1件)
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