研究課題
平成28年度は、3年の研究期間の最終年度にあたる。前年度まで行ってきた、気候史料の収集、データベースへの入力を継続して、統合型地理情報システムを構築した。また気候史料の分析についても継続した。この統合型地理情報システムには、とくに日本の気候災害史料のうち、中世気候異常期を中心にデータ入力を行ってきたが、さらに後続する小氷期における気候災害史料の入力も行った。また、中国においても中世気候異常期の気候災害史料のデータベースへの入力を行ってきたが、後続する小氷期についてもデータ入力を行った。文書記録である気候災害史料について、とくに強風災害の史料を幕末期における気象観測記録と比較したところ、強風災害と異常な気圧低下にはよい対応がみられた。このことから強風災害が台風の通過を示すことが確認された。日本と中国の強風災害記録を、統計的また空間的に解析すると、日本を含む東アジアの気候状態が太平洋高気圧の盛衰と関わることが示された。すなわち循環系の変動を示すことが確認された。そのため気候災害史料の分析から、循環系による変動の復元が可能となった。さらに広域の変動についても、これまでに明らかにしてきた日本や欧州での気候変動にもとづいて、復元できた。歴史時代の気候復元研究には、文書記録の分析など隣接分野からのアプローチの必要性も増しており、日本地理学会の気候と災害の歴史研究グループほかで、研究成果について意見交換を行った。この、中世気候異常期の気候変動については日本地理学会で発表を行い、さらに今秋刊行予定の学術論文として投稿準備を進めている。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
Bull. Seanc. Acad. R. Sci. Outre-Mer Meded. Zitt. K. Acad. Overzeese Wet.
巻: 61 ページ: 469-487