平安時代に関東地方北部で発生した大地震とそれに伴う地震災害に関する最も合理的な復元を試みることを目的とするため,主に4つのことを実施した.1)片品川断層の地形調査及びトレンチ掘削調査,2)太田断層の地形調査,3)太田断層のトレンチ掘削調査,4)群馬県内の遺跡報告書の地割れ・噴砂跡に関する記載の収集調査を実施した.以下に具体的に結果を示す. 1)片品川断層はこれまで十分に分かっていなかった断層であるため,活断層である地形・地質学的証拠と,その変位速度について検討した.また,西暦818年の地震断層である可能性も否定できないため,トレンチ掘削調査を実施した.その結果,西暦紀元前3000年以降活動している明瞭な証拠は得られず,また,榛名渋川軽石(6世紀中頃)の地層を変形させていないことを考えると,西暦818年の地震を引き起こした断層とは考えにくいことを明らかにした. 2)太田断層の地形調査 RTK-GPS測量に基づいて,断層沿いの地形面を指標とした地形測量を実施した.多くの地点で,段丘面や沖積低地を変位させることを明らかにした. 3)太田断層のトレンチ掘削調査 太田市龍舞にてトレンチ掘削調査を実施した.沖積錐に50cm程度の小崖があり,低断層崖と判断した地点で実施した.トレンチ壁面下部には土石流性の堆積物が連続して堆積し,断層変位を示す構造は認められないことから,この小崖は人工的に形成されたものと判断した. 4)遺跡報告書の地割れ・噴砂跡に関する記載の収集調査 群馬県埋蔵文化財調査所において,遺跡報告書の記載や写真から地割れ・噴砂跡の記録を確認し,分布図を作成した.
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