研究課題/領域番号 |
26350403
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研究機関 | 東京情報大学 |
研究代表者 |
原田 一平 東京情報大学, 総合情報学部, 研究員 (80451748)
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研究分担者 |
Park JongGeol 東京情報大学, 総合情報学部, 准教授 (40337770)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | リモートセンシング / 植生図 / 自然環境保全基礎調査 / Terra/MODIS / モニタリング / 東日本大震災 / 生物多様性 |
研究実績の概要 |
本学で受信しているMODISデータを用いて、雲を除去した多時期の月別コンポジットデータを整備し、全国スケールの植生現況図(2014年版)を作成した。日本全国を対象としてISODATA法により、植生域を40、非植生域を10に分類およびラベリングした結果、相観レベルの9クラスの分類では概ね適切な結果を得ることができた。8月だけのコンポジットデータでラベリングした結果、この森林域(落葉広葉樹林、常緑広葉樹林、常緑針葉樹林)の分類は不十分であり、春から秋までの月ごとのコンポジットデータを用いることで、落葉広葉樹の展葉時期などフェノロジーの違いによって分類されている可能性が示唆された。また、5万分の1植生図のブナ群落(自然植生)、ミズナラ群落、コナラ群落(代償植生)の分布と2013年Terra/MODISの植生現況図から抽出したブナ群落、ミズナラ群落、コナラ群落の分布を比較した結果、ブナ群落とミズナラ・コナラ群落とは識別が可能で、相観レベルの一つ下の階層クラスを把握できることが示唆された。 次に、東日本大震災後の南相馬市における非耕作農地の現状および農地土壌放射性物質濃度測定のモニタリングを行った。2014年8月から除染事業が活発化したため、多くの農地土壌の放射性物質濃度が低下し、営農を再開した地域が見られたが、2015年9月の調査時点で、農地除染が行われていない福島第一原発から20km圏内の非耕作農地は、依然として10000 Bq/kgを超える高濃度の土壌放射性物質が検出されていることを把握した。南相馬市では東日本大震災後に収穫された稲から基準値を超える放射性セシウムが検出されたことによりコメの作付けができない地域が多かったが、2014年よりコメの作付けが再開された。しかし、営農再開した作付面積は2014年5月30日時点で震災前のわずか2%、2015年度は震災前の約10%にとどまっている(南相馬市役所経済部)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、ポスト2010年目標「愛知目標」の実現に向けて、生物多様性の管理・評価及び将来予測に必要な土地利用・土地被覆分類図などの基礎データを提供することを目的としており、具体的には、環境省の自然環境保全調査データの補完として広域スケールの観測が可能なTerra/MODISデータを用いて、全国レベルの土地被覆図(植生現況図)を作成して定期的に更新することを目指している。平成27年度は本学で受信しているMODISデータを用いて、雲を除去した多時期の月別コンポジットデータを整備し、全国スケールの植生現況図(2014年版)を作成した。ISODATA法の特性に着目し、これまで相観レベルにまとめられていた分類結果を一つ下の階層クラスを把握できることが示唆された。 福島県東部(浜通り地方)の第6,7回自然環境保全基礎調査は第3回自然環境保全基礎調査(1985年)以降未整備の状況が続いていたが、震災前のLandsat-5/TM(2009年6月2日)と震災後のLandsat-8/OLI(2014年5月31日)を用いて、福島県南相馬市の土地利用・土地被覆変化を把握した。南相馬市における震災前後の土地被覆を比較した結果、森林(常緑針葉樹林、落葉広葉樹林)の土地被覆変化は顕著に見られないが、農地面積は4893.9 haから236.4 haに減少、草地面積は2503.3 haから11889.4 haに増加し、震災から3年が経過しても営農がほとんど再開されていないことを俯瞰的に把握した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26,27年度に引き続き、Terra/MODISデータを用いて、雲を除去した月別コンポジットデータの作成および日本全国レベルの土地被覆図(植生現況図)を整備し定時的に更新する。前年度の解析結果との一致性を保つために解析手法も一致させる必要があり、その手法を定式化する。この手法が確立されることによって、NASAから無償で提供されているMODISデータを用いることで、予算的にも低コストで全国をほぼ同時期に網羅する植生現況を把握でき、現在環境省で進められている、第6,7回自然環境基礎調査の2万5分の1植生図を補完する役割を果たすことができると考えられる。 2011年3月に起きた東日本大震災における被災状況及び震災後の土地被覆変化の把握は、東北地方における地域再生・復興計画と生物多様性保全の上で重要な課題である。最終年度は、より空間分解能が高い衛星データ(Landsat、RapidEye)を用いて、現地検証と併せて、より精確な土地被覆の解析を行う。これまでの成果によって、異なった空間分解能で判別できる地上の土地被覆の単位が明らかになっており、目的に適った空間分解能の衛星データを用いることで、的確な土地被覆変化の抽出が可能になる。異なる時間・空間分解能と分光特性をもつ衛星データを用いた土地被覆動態と景観構造の解析結果を用いることで、震災及び復旧・復興事業が当該地域の生態系に与えた影響を明らかにすることが可能となり、当該地域で必要とされる対応策の策定に重要な知見を提供できるものと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
MODISを用いて全国スケールの植生現況図を作成したが、精度検証用の第6,7回自然環境基礎調査植生データは、東日本大震災の被災地および山岳地における植生現況は未整備のため、高分解能の衛星画像データを用いて、東日本大震災前後の当該地の土地利用・土地被覆図を作成する必要がある。平成27年度は福島第一原発から北側40km圏内の沿岸地域における震災前後の衛星画像データを購入したが、精度検証用の対象地域としては不十分なため、次年度は茨城県東部および福島県東部における高分解能の衛星画像データを購入して、精度検証用の土地被覆図を作成する。
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次年度使用額の使用計画 |
東日本大震災前後の被災地における土地利用・土地被覆図を作成するため、茨城県東部および福島県東部を対象地域として、展葉前(12月~4月前半)と展葉後(4月後半~10月)のRapidEyeもしくはGeoEye-1の衛星画像を購入予定である。
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備考 |
スオミ-NPPに搭載された可視近赤外放射計群(VIIRS)は、可視波長帯域から、近赤外そして熱赤外波長帯域に感度を持つセンサーである。このサイトでは、東京農業大学オホーツクキャンパス(網走市)、東京情報大学(千葉市)、農大宮古亜熱帯農場(宮古島市)の地上局において直接受信したVIIRSのデータから作成されたトル―カラー画像、海洋プロダクト、陸圏プロダクトをモニターすることが可能である。
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