研究課題/領域番号 |
26350404
|
研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
高岡 貞夫 専修大学, 文学部, 教授 (90260786)
|
研究分担者 |
苅谷 愛彦 専修大学, 文学部, 教授 (70323433)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 地すべり / 植生 / 中部山岳地域 |
研究実績の概要 |
既存文献のレビューと中部山岳地域での調査結果から、地すべり発生後の植生発達様式の類型化と植生構造の形成との関係の整理を行った。その結果、地すべりによって新しく形成された地表で起きる植生発達は、一次遷移あるいは二次遷移を通じて地すべり発生前に成立していた極相に向かって近づいていくケースばかりではなく、土地的特性(特殊な土壌条件や微気候)と結びついて成立した植生が長期的に維持されるケースや、急崖など不安定な斜面に攪乱耐性種が優占する植生が継続的に成立するケースがあることを指摘した。さらに、地形・地質条件を反映した個々の地すべりの発生様式の違いや地域の気候の違いも植生発達過程に影響を与えるので、地すべりの影響を明らかにするには、広域的かつ系統的な比較研究が必要であることを確認した。 地すべり生態系の一要素であり、水生植物による植生が形成される山地池沼を例に、中部山岳地域の標高2000m以上の地域を対象とした広域的検討を行った。その結果、地すべり地に形成される小地形が、池沼の発達する場の提供者として重要であること、池沼の形成には地すべり地形が存在するだけでなく、積雪量や地質条件が関わっていることを明らかにした。また地すべり成の池沼は、面積、出現標高、形成年代、水質などの点で同地域内の火山成、氷河成の池沼とは異なる特性を持ち、水性生物に重要な生息地を提供している可能性を指摘した。 これとは別に、航空レーザ測量による1m精度のDEMと航空写真が得られた北アルプス北部、北アルプス南部、南アルプス中部においてDEMを用いた地形解析と現地での植生の記載を実施し、地すべり地の植生発達に積雪の影響、すなわち雪圧、融雪水の供給、生育期間の短縮の影響が大きく関わっている可能性を指摘した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね計画通りに進んでいるが、DEMや航空写真の解析結果を野外で検証するための最適なフィールドの選定に時間を要し、フィールドでのデータ取得が十分に実施できたとはいえない。また、年代測定用の試料が十分に得られたとはいえない。
|
今後の研究の推進方策 |
北アルプス北部から南アルプス中部にかけての地域において、植生調査と地すべり地形調査を継続する。また、昨年度に精度の高いDEMと植生分析に適した時期の航空写真が得られた梓川上流域について、ここを特に重点的に調査する地区と位置付けて、地すべりおよび地すべり以外の地形プロセスが長期的・重層的に植生発達に影響してきた過程を検討する。地形発達史および植生発達史の双方に時間目盛りを入れるための年代推定試料を得るための調査も実施する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
放射性炭素年代測定を行うための試料が、予定していた数より少なくしか得られなかったため。また野外調査のための出張が、予定していた日数よりやや少なかったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度には適切な年代測定試料を得るために調査を継続的に実施し、次年度使用分として繰り越されたものを試料分析に使用できるようにする。
|