研究課題/領域番号 |
26350404
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
高岡 貞夫 専修大学, 文学部, 教授 (90260786)
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研究分担者 |
苅谷 愛彦 専修大学, 文学部, 教授 (70323433)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 地すべり / 植生構造 / 中部山岳地域 |
研究実績の概要 |
重点的に調査する地区と位置付けた梓川上流域のうち、玄文沢および善六沢の流域において、地形発達史と植生構造との関係を明らかにするための調査を実施した。玄文沢上部左岸の地すべり地においては、滑落崖にカラマツ林が形成されていた。年輪試料によると林齢はおよそ200年程度と推定される。亜高木層以下にシラビソやオオシラビソが出現し、将来的にはこれらが優占する林に遷移していくと考えられる。地すべり移動体内の斜面のうち地表を巨礫が覆う場所ではトウヒ優占林が形成されていたが、トウヒの稚樹はどのタイプの森林下でも少なかった。耐陰性が低いカラマツやトウヒが更新するには大規模な攪乱を必要とするが、地すべりや崩壊はそのような場所を提供していると考えられる。また、玄文沢・善六沢が梓川の氾濫原に達する場所には沖積錐が発達するが、ここでは新しい土石流跡地にタニガワハンノキ林がみられ、時間の経過した土石流跡地ではウラジロモミやハルニレの優占林となっていた。玄文沢の沖積錐において、土石流による植生の攪乱と再生が繰り返されているのは、現在は沖積錐の南部に限られている。玄文沢上部に給源があると考えられる岩屑が沖積錐中央部にローブ状の微高地を形成しており、これが土石流の流下する範囲を南部のみに制限している。放射性炭素年代の測定結果や年輪情報から、このローブ状地形は完新世中期までに形成された沖積錐の上に、370-220年前に発生した崩壊の堆積物によって形成されたものであると考えられる。玄文沢上部での崩壊が沖積錐の攪乱体制を特徴づけ、間接的に植生構造を規定している例ととらえられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
概ね計画通りに進んでいるが、日本アルプス全体を対象とした広域的な比較研究に関しては、GIS図化作業が完全に終了した状態ではない。また放射性炭素年代測定に用いる試料について、もう少し多くの地点で入手できるとよいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
補足的な現地調査を実施し、重点調査地区での地形発達史をより明確なものにしていく。広域的な比較研究においては、GISによる図化作業を早急に完了させ、生物的因子(個々の地域のフロラ)と非生物的因子(標高、地形的位置、地質、積雪深等)との関係において、地すべり地の植生構造の多様性を分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
現地調査によって得られた、放射性炭素年代測定を行うための試料が、予定していたよりも少ない点数であったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に行う補足調査の中で、年代測定を行うための試料採取を行い、それらの分析のために、次年度使用分として繰り越された研究費を使用する。
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