研究課題/領域番号 |
26350406
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
中山 裕則 日本大学, 文理学部, 教授 (90318329)
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研究分担者 |
羽柴 秀樹 日本大学, 理工学部, 准教授 (20267016)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | PALSAR / PALSAR-2 / JERS-1/SAR / InSAR / 地盤変動 / 高分解能衛星 / マルチスペクトル / 土地被覆分類 |
研究実績の概要 |
本研究は、顕在化・広域化する近年の自然災害に対する発生状況の把握、要因分析のための分析手法の高度化と、その減災へ向けた適用事例の基礎検討について、近年の自然災害の発生と被害状況を、既存のSARおよび新しいSARデータ、その関連データならびに現地情報を統合解析して、より高精度な抽出方法の検討を行うことを目指すものである。 平成27年度は、まず、前年に引続き、衛星観測合成開口レーダデータのALOS/PALSARデータ、新しいALOS-2/PALSAR-2データ、1990年代のJERS-1/SARデータおよびこれらと統合する光学センサデータを追加収集して、それらの統合データセットの編集・構築の高度化を図った。対象地域は、前年度から継続している国内の津軽平野および関東平野、国外ではタイの中央平原および中国の長江河口域である。 上記のデータセットに基づき、前年からの継続である津軽平野においての地盤変動とその洪水災害への影響についての解析手法の確認のための現地調査を実施し、地盤変動抽出手法の有効性ならびに地盤変動要因と洪水発生リスクの分析の可能性を検討した。 また、関東平野の中央部における近年とやや長期の地盤変動の有無の基礎的解析、2011年大洪水発生地であるタイ中央平原における地盤変動抽出のための初期的解析、中国の長江河口における災害発生リスクに関連すると想定されるデルタの拡大や開発状況の解析などを行った。 さらに、関東平野では、前年と同様に岩槻周辺と綾瀬川と元荒川沿いの軟弱地盤地域の沖積低地において、SARデータと光学式高分解能リモートセンシングによる情報の融合方法についての検討を進捗させた。具体的には、光学式高分解能衛星画像による土地被覆分類処理の系統的な比較検討をさらに進捗させ、土地被覆分類の誤差要因についての検討ついて重点的に検討を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の目標は、①対象地域のALOS/PALSAR、ALOS-2/PALSAR-2、JERS-1/SARの各データとこれらと統合する高分解能衛星光学センサデータを追加収集して、統合データセットの編集・構築の高度化を継続的に推進すること、②津軽平野の地盤変動と洪水災害への影響の基礎的解析結果の確認のための現地調査を実施し、手法の有効性、洪水発生リスクの分析の可能性を検討すること、③関東平野中央部の長期の地盤変動の基礎的解析、タイ中央平原の地盤変動抽出の初期的解析、中国の長江河口のデルタ拡大や開発状況の分析などを行うこと、④既存の分類手法の適用性の検討をさらに推進することなどであった。 研究の結果として、①では、国内の津軽平野と関東平野、国外のタイ中央平原と中国の長江河口域において、長期間のモニタリング用の衛星データセットを拡大構築した。②では、津軽平野の1990年代から現在までの地盤変動の傾向を解析し、2000年代に一定割合での沈下状況が把握され、現地調査結果も合わせて、地盤沈下解析手法の有効性と洪水発生リスク分析の可能性を示すことができた。③では、関東平野中央部の長期地盤変動傾向の解析のための1990年代以前の地盤変動計測成果の編集を行った。また、中国の長江河口のデルタについて1960年代からの光学センサデータの解析により、2003年までのデルタの急速な拡大とそれ以後の拡大傾向変化を把握することができた。さらに、タイ中央平原では、InSARの初期解析により都市部での僅かな地盤上昇を確認した。④については、対象地域独特の土地被覆状況の抽出性の向上と誤差要因の分析に向けての検討に重点を置きつつ研究を進捗させた。 以上のような研究の実施結果から、研究はほぼ計画通りに進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、ほぼ計画通りの進捗状況であったことから、今後も、当初の計画通りに研究を推進する予定である。 具体的には、まず、衛星データセット構築に関して、長期的な変化や変動の抽出のためにさらに追加してデータを収集し構築の高度化を図る。また、SARデータと統合解析を行うための光学センサデータや地盤変動あるいは土地被覆に関連するデータの収集も推進する予定である。 津軽平野では、地盤変動の規模が比較的コンパクトなことから、20~30年程度の期間における地盤変動の推移と土地被覆変化の解析結果に基づき、開発適用した分析手法の評価を行う予定である。関東平野では、1990年代以前における地盤沈下の調査データの編集を引続き推進し、合わせて近年の地盤沈下の推移を解析して、今後の洪水発生等のリスクとの関係の分析を推進する予定である。タイ中央平原では、都市部で僅かな地盤の上昇パターンが認められたことから、その詳細な分析を推進するとともに、やや長期的な地盤変動と洪水発生の関係についての分析を試みる予定である。中国の長江河口域では、デルタ拡大域における地盤変動などの有無について解析を試みる予定である。 さらに、SARデータと光学式高分解能データによる情報の融合方法についての検討では、分類結果の系統的な整理を終了させ、発生する土地被覆分類誤差についてのアセスメント方法について検討するとともに、SAR画像との融合手法や解析の工夫を進捗させる予定である。この結果から、都市化を含むテストサイトでの土地被覆変化、平野内の微地形、地盤変動について特徴の分析につなげる予定である。 以上の分析手法の検討結果と適用解析事例に基づき、自然災害の減災へ向けた手法適用や対策に関して提言を試み、研究の取りまとめを行うことを目指す予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度における土地被覆分類処理手法の検証においては、これまでに取得した初期取得画像データで解析・分析が可能であったため。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度の検討結果に基づき、次年度において、新たな高分解能衛星画像データを追加取得し、手法のより高度な検討を行う予定。
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