研究課題/領域番号 |
26350408
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
渡辺 和之 立命館大学, 経営学部, 非常勤講師 (40469185)
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研究分担者 |
橘 健一 立命館大学, 産業社会学部, 非常勤講師 (30401425)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 交易 / ヒマラヤ / 土地利用 / 流通 |
研究実績の概要 |
2015年4月25日にネパール大地震が起きた。このため、当初申請書の段階で計画していた予定を昨年5月の実施状況報告書の段階で変更し、昨年度は地震で本研究の調査地の生活がどう変わり、農牧林産物交易に影響したのかを調査した。 幸いなことに渡辺の調査村でも、橘の調査村でも、地震による死者は出ていない。しかし、家屋の倒壊やひび割れなどの影響はどの世帯でも大なり小なりの損害を受けていた。今後、これらの世帯が復興してゆく上で、家屋の改築や修理などに多くの資金が必要となる。だが、それらの資金がまかなえるほど政府や国際機関の援助は見込めず、多くの部分は被災者が自力で生活を再建するしかない。このため、海外への出稼ぎがなおいっそう拡大することが予想できる。農牧林産物の交易が出稼ぎに代り、村に残った人々の生活手段としてどれだけの力になるのか。これから復興の過程で本研究の問題が試されることになるのだろう。 被災状況に関する調査は5月におこない、3月には復興の状況を確認した。その成果は、5月にその成果は調査中に救援隊の手助けになるよう、在ネパール日本大使館にもメールで送ると同時に、名古屋大学防災館、6月に立命館大学、日本ネパール協会開催支部例会、7月に生き物文化誌学会、1月に宇治公民館、3月に日本地理学会などでも報告した。また、3月の日本地理学会では、山岳地域に関するシンポジウムを組織し、山岳地域のコモンズや観光化を考えてゆくなかで、農牧林産物が山岳地域における資源利用として重要な役割を果すだろうとの本研究の知見を述べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
地震の影響については、発生直後にいち早く現地に調査に行くことができた。このため、その初期被害については、相当な事例を蓄積することができた。発生後、1年近くが経過し、だんだんと被害の実態が見えなくなるなかで、本研究によるデータは今後貴重な資料となるだろう。このため、できるだけ、1次資料を含め、論文として公開してゆくことが重要である。 当初の計画のなかでは、東部ネパールと中部ネパールについてはすでに十分な蓄積がある。ただし、土地利用の変化に関するデータについてはまだすすめておらず、今後は具体的なデータを蓄積することが必要である。 流通については、これまでの調査で生産者である村側からはおおむね把握してある。今後は流通先の都市側での調査も必要に応じておこなう必要がある。 また、初年度に調査していた極東ネパールとインド・ヒマラヤに関しては、おおむね当初計画で予定していた成果が出せることがわかった。今後、土地利用や流通について、東部ネパールや中部ネパールと比較できるためのデータを取るため、補充調査をおこなってゆく必要があるだろう。 また、成果については、これまでわかったことに関しては、学会発表の段階まで順次すすんでいるが、今後は論文にしてゆく必要がある。最終年度は、補充調査の分を含めた形で論文を公表し、報告書を作成してゆく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
東部ネパール(渡辺)、中部ネパール(橘)、昨年度までに十分におこなえなかった土地利用の変化を中心に調査する。農牧林産物の生産地が全利用地に占める割合がどれだけのものなのか、家からの距離が他の自給作物と比べ近いのか否かを具体的に示すことが焦点となる。また、地震の影響という点で、震災以降に農牧林産物の生産が増えたのか、減ったのかを、把握する必要がある。 また、初年度に調査をおこなった極東ネパールとインドヒマラヤ(渡辺と橘)で補充調査する。この地域は、東部ネパールや中部ネパールに比べると、農牧林産物交易の歴史が長く、前者の地域の行く末を考える上でも参考になる地域である。また、地震の影響をほとんど受けていない点でも、土地利用の変化など量的に比較できるため、調査をおこなってゆく。 さらに、流通については、首都カトマンズを中心に、インドのラクノウ、ダージリン、コルカタ、バングラデシュのダッカでも、必要に応じて調査する。 成果については、5月にクロアチアでおこなわれる国際人類学民族学会、6月に東京でおこなわれる生き物文化誌学会、7月に広島でおこなわれる現代インド研究会、8月に中国の北京でおこなわれる国際地理学会、9月に仙台、3月に筑波でおこなわれる日本地理学会で発表し、順次論文にしてゆく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者の橘が夏と春の2回にわけて調査をおこないたい旨を申し出たため、次年度の夏にも調査できるよう本年度の予算を残しておいた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は全額橘に配分し、次年度の調査旅費として使用する。
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