2016年度には、近年、農牧林産物の商品作物栽培の進みつつある東部および中部ネパールで、おもに畜産物の調査をした。 東部ネパールでは、舎飼いと移牧の2形態で家畜を飼養する。このうち、移牧の調査では、冬の放牧地でシナモンの葉の栽培が進んでおり、家畜の放牧が制限されるなどの事態に発展していた。また、市場との関わりでは、廃用家畜を換金するため、都市に出荷していたが、仲買人が高齢化で減少するなど、問題を抱えていることが分かった。 舎飼い家畜については、自動車道路の開通を契機にファームと呼ばれる家畜の飼養形態が農村部で普及した。ただ、問題は飼料にある。出稼ぎや都市への移住で村内から労働力が減少しており、家畜のために草刈りの手間を出せる世帯とそうでない世帯との間で二極化していた。また、市場との関わりでみると、農村で飼養した家畜の多くは村内で売買し、消費する。ただし、一部は都市居住者におみやげとして持ってゆくなど、市場を通さない流通経路で都市にまでたどり着いていることが分かった。 中部では、2015年に起きた地震の影響で、中国チベット自治区から輸入していた羊毛の交易に使われていた自動車道路が通行止めとなり、脇街道のラスワルートが主街道として復活したことがわかった。 また、研究成果については、国際地理学会(北京)、国際ワークショップ(インド・北東丘陵大学)、現代インド研究会(広島大学)、生き物文化誌学会(星薬科大学)、日本地理学会(筑波大学)などで発表をおこなった。
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