本研究では,市場における品質不具合発生の未然防止をねらいとして,品質不具合情報を解析し,設計段階,工程管理段階で活用する方法と,その解析結果をもとに設計段階でコンピュータシミュレーションを効果的に計画,活用する方法を開発している.ここでの品質不具合データとは,不具合,事故,リコールなどの現象,原因を記述したものである.またコンピュータシミュレーション技術そのもの開発ではなく,それを不具合防止のために効果的に活用する分野横断的な統計的方法を開発している. 品質不具合を未然に防止し高品質を目指すには,デザインレビューの効果的活用が不可欠であり,これを目的にデザインレビューの項目を確認する方法を導いている.従来,製造業での適用を中心に,部品と現象間の関連性,部品間の関連性分析結果など,研究を進めたのに対し,今年は対象を製薬,流通,情報システム開発などにも広げている. 品質確保のためにコンピュータシミュレーションへ実験計画法を適用する際,これが効果的なのは(i) 開発途中のシミュレーションモデルの妥当性検証(validation),(ii) 多数の因子から重要な少数因子の絞込み,(iii) 複雑な応答関数を少数因子の近似関数で表現である.その中で今年度は,特に整備が遅れていると思われる(ii)について検討を加えている.この計画として有効なのは一部実施実験である.本研究では過飽和実験計画の適用について特に中心的に研究を進めている.具体的には,コンピュータシミュレーションを念頭に,因子数,実験数が従来の5から10倍程度の計画の構成方法を検討している.またそれらの解析方法として,Lassoなどの適用も検討している.
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