昨年度に述べた今後の推進方策(1)~(3)に関して,以下の成果を得た. (1)ルールとロバストネス:不精密ルールへのアンサンブル学習の導入を試みたが,分類精度が向上するものの有意差が得られないことが示された.これにより,不精密ルール群の高い有効性が示された.また,要求される匿名性をもつ不明確ルールの存在条件や,匿名性を保存する属性縮約を識別行列を用いて特徴づけられることを明らかにした. (2)順序回帰:与えられた選好情報の下で,各代替案間の選好の成立確率が数値実験で算出できることを明らかにし,区間順序回帰で推定される選好の成立確率を調べた.その結果,大半は高い確率で成立するが,一部はかなり低い確率でしか成立しないことが判明した.これによりモデル推定に用いる評価関数に改良の余地が残されていることが分かった.一方,区間順序回帰へのファジィ分割の導入による非線形モデルを考案し,線形計画問題を解くことによりモデル同定できるこを明らかにした.これにより線形モデルでは扱えない選好情報を取り扱えるようになった.また同時に,ファジィ分割による非線形化と同等のパラメータ数をもつ従来モデルとのいずれを用いるべきかという興味深い課題が発掘できた. (3)区間AHP:区間重要度の望ましい性質の検討中に,整合した区間一対比較行列が与えられた場合に,内側からの近似で得られる区間重要度が外側からの近似で得られるものより大きくなるという意外な性質を発見した.これは,整合した区間一対行列を共有する複数の正規な区間重要度ベクトルが存在することによること明らかにした.また,この性質を考慮した区間重要度の一推定法を提案した.通常の一対比較行列が与えられた場合に,パラメータを含まない区間重要度推定法を提案した.この手法がパラメータ調整した緩和法に大きく劣らず,従来法より良い推定結果を導く可能性を数値実験により提示した.
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