本研究では「施設立地」「在庫計画」「配送計画」を統合したロジスティクスネットワーク設計のモデルを開発した. 初年度は実務家へのヒアリングより配送計画の部分では,契約便・スポット便の選択,スポット便の国交省タリフ準拠の料金設定・往復便割引・温度帯別配送・危険物配送・ドライバーの休息・夜間走行速度等といった詳細かつ現実的な問題設定を考慮した配送計画を考慮した.これらの要件を考慮する事で解空間が非常に狭くなり,メタ解法(SA・ACO)等を用いても現実的とは言えない最終解が導出されたため,一般化割当ベースのヒューリスティクスを提案した.
次年度は初年度に開発した配送計画と在庫計画を統合した在庫配送計画モデルを作成した.具体的には倉庫での発注方式選択(定量/定期)・発注間隔をアイテム毎に選択するモデルを作成した.従来の在庫管理ではアイテム毎に独立に決定が行われるが,配送を考慮する事でまとめて運ぶ事による規模の経済を考慮する事が重要となりアイテム全体での最適化が必要となる.実データを用いて解析した結果,数千アイテムある中の95%以上は発注間隔0日の定期発注(=毎日発注)が選択された.EOQから判断すると発注間隔1日以上かかる様な比較的動きの遅いアイテムであっても,配送規模の経済を活かし毎日発注が良いという結果が得られた.
最終年度は施設立地を統合したモデルを作成した.作成したモデルをクロスドックセンターの設置の有無を検討する事例に適用して考察を扱った.クロスドックセンターを介した配送は規模の経済を享受できる一方で,中継による遠回りのトレードオフがあり,アイテム全体で最適化を行う必要がある.結果としては,需要量が大きく遠回りが大きいものについては,工場からの直送,需要量が小さく遠回りが小さいものはクロスドックセンターを設置したロジスティクスネットワーク設計が重要である事がわかった.
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