研究課題/領域番号 |
26350442
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
片岡 隆之 近畿大学, 工学部, 准教授 (40411649)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 生産システム / ロバスト / 混成 / ベイジアン / 作業スキル |
研究実績の概要 |
平成27年度に実施した研究の成果については,交付申請書に記載した「研究実施計画」のとおり,以下の2点について研究を進めることができた.本年度は,本研究対象である動的ロバスト混成生産システムのモデル構築に注力し,その成果の一部は論文誌に掲載された. 1. ベイジアンネット技術と生産システムのロバスト管理方式(平成26年度の続き) 本研究対象であるライン/セル混成計画を検討する前に,ライン生産方式における不確実環境下でのロバスト性について,ベイズ推定を用いた新たな評価手法を構築した.具体的には,現状の生産計画に対し,モンテカルロシミュレーションとベイズ推定による確率分布を適用することにより,変動し易い要素作業を見つけることができた.本研究では,各種パラメータを変動させながら,それらを包括的に分析し,その結果は論文誌に掲載された. 2. ライン/セル混成計画のためのモデル構築(新規) 本研究対象であるライン/セル混成計画のためのモデルを新たに構築した.具体的には,Suerらによる「スキル基準作業者割当問題(2段階層法)」を統合した,発展型「多期間ライン/セル混成問題」を定義した.Suerらのモデルは,多段階の混合整数計画問題を解くアプローチを適用しているため,以下の2つの弱点を持っていた:(1)セルにおける要員構成の選択肢が限定される,(2)製品ごとのセル配置人数を変更できない.本研究では,新たな決定変数を導入することにより,これらの弱点を克服できる「統合型混合整数計画問題」を提案し,数値実験により従来法と比較することで,より良い解を導くことを明らかにした.その結果は,本分野で有名な国際学会に採択・発表された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度も記述したとおり,経営工学分野である科学的・工学的アプローチや管理技術ノウハウが再注目されている中,特に国内産業を支える製造分野における熟練技術者による管理技術ノウハウに関するモデリング研究は,具体的事例が散見される程度でしかない.そこで近年,確率推論の一つとして注目を浴びているベイジアンネット推論技術を応用することにより,作業現場におけるジェロントロジー(高齢化問題)を含む多様な作業者層に対し,不確実な需要変動に対するロバスト性を評価しつつ,非熟練者であってもライン/セル混成の機動的な対応が可能な作業者スキル適応型動的ロバスト混成生産システムの開発を本研究では目指している.特に本年度の研究では,「研究の目的」に記載された以下の研究課題に取り組み,次の成果を出すことができた. (目標1及び2) ライン/セル混成モデルの構築とロバスト管理方式の確立 申請者のこれまでの研究成果に基づき開発された対話型生産システム(プロジェクト・スケジューリング版/ジョブ・ショップ・スケジューリング版)に加え,ベイジアンネット構築支援ソフトによる条件付確率の変動に対応するためのライン/セル混成モデルを構築するとともに,そのモデルのロバスト性を示した.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は平成27年度に構築された数理モデルに基づき,以下の内容について研究を進めていく. 1. ライン/セル混成モデルをベースにした操作習熟度を判断するための環境要因・操作プロセス・定量評価値の設定 操作履歴の収集やそのデータからベイジアンネットワークモデルの構築を検討する前に,まず操作習熟度を定量的に判断するための環境要因・操作プロセス・定量評価値の設定が必要不可欠である.申請者のこれまでの研究では,各変数を大きく3つに分類し,親ノードには作業者,操作における目的などの環境要因を配置し,1回目から10回目までの操作プロセスにおける目的(例:総作業時間と総作業重複)の増減値に因果関係があるとし,そこから最終的な定量評価値や日程計画の妨げとなる要因(手戻り操作)に因果関係があるとすることで,効果を挙げることができた.ここでは,まずライン/セル混成モデルにおける解析を試みる. 2. ライン/セル混成モデルをベースにした熟練技術者と非熟練技術者の操作履歴によるスキル抽出法の確立 次に操作履歴の収集を行い,熟練技術者と非熟練技術者における日程計画の計画手順の違いについて,操作の目的別(例:総作業時間を最小化する場合と総作業重複を最小化する場合)に分けて考察する.さらに,収集した操作履歴を基にベイジアンネットワークモデルを構築し,確率推論を行うことにより,熟練技術者の操作の有効性を検証するとともに,両者における操作の差を埋めることによって,熟練技術者に近い最終評価値が求められるような操作基準を検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
スカイプによるテレビ会議システムや電子メールを用いた打ち合わせの機会を効果的に取り入れることにより,旅費項目の効率的な運用を実行することができたため.また数値実験におけるデータ整理を自ら実施したことにより,人件費・謝金項目を発生させることなく成果を出すことができたため.
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に台湾にて開催予定の大規模な国際学会(the 17th Asia Pacific Industrial Engineering & Management Systems Conference 2016(APIEMS2016), December 7-10, Taipei, Taiwan)に新たにエントリーし,成果発表の機会を増やすことにより,最終年度における研究成果レベルのさらなる向上を図りたい.また最終年度は構築されたモデルに基づき,多くのデータ整理業務が発生することが予想されることから,謝金を用いて効率的な研究の取りまとめを実行していきたい.
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