近年、製品開発や医薬品開発において、大規模なシミュレーション実験に基づく技術開発が盛んになってきている。設計開発段階で、数値実験の結果から設計することは開発時間の短縮およびコスト低減のみならず極めて重要である。しかしながら、この方法については、次のような問題がある。第一にシステム内の変数間に存在する関数関係を有限要素法や微分方程式の数値解法に基づきシミュレートするため膨大な計算処理時間を要する。第二に、応答曲面の形状が実実験に比べ複雑なものになる傾向があり、最適設計が困難になる可能性がある。第一の問題点について:効率的な実験計画としてSpace-Filling計画の一つ一様計画(uniform design)を適用し、意図的に疎(スパース)な実験点を生成させるとよい。これは「実験空間上に一様にランダムに分布している計画で、実験回数と等しい水準数を持つ多水準系の一部実施計画」であり、Fangらより提案された。第二の問題点について:複雑な応答関数を眺めるための非線形モデリングの手法として、Box流応答曲面モデルのみならず、高次の多項式、B-スプラインやGauss過程モデルなども有効である。これらの研究は、(1)伝統的実験計画に基づくデザイン、(2)線形システムを対象としたモデリング(3)単特性の最適化を中心に進めてきたが、本研究では、これまでの結果をさらに発展させた、大規模シミュレーション実験における非線形モデリング、さらに、ロバスト性を考慮した多特性最適化に対する品質工学的技術方法論の開発を試みた。
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