研究課題/領域番号 |
26350460
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
土屋 隆生 同志社大学, 理工学部, 教授 (20217334)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 音空間レンダリング / 情報伝達 / 防災無線 / FDTD法 / GPU |
研究実績の概要 |
災害時の情報伝達手段として防災行政無線は有効であるが,地形や建造物による音波の乱反射・回折などに起因した音声明瞭度の低下が指摘されている。しかしながら,現時点で個々の拡声子局の設置状況に対応した音声明瞭度の予測手法は確立されていない。本研究では,音空間レンダリングと呼ばれる音場解析手法を用いて,実際の地形や建築物に対応した音声明瞭度予測手法の開発を目的としている。さらに明瞭度を数値的に提供するだけでなく,レンダリング結果をスピーカアレイに出力することで音場そのものも3次元的に提供する音声明瞭度提示システムを構築し,防災システム設計者に対して音響的なフィードバックが可能なシステムを構築することを目的としている。 本年度は,①地形や建築物などの3次元形状を音空間レンダリングに組み入れるための任意境界条件の開発と②GPUクラスタの拡張を実施した。①については,これまで開発されたプログラムは,扱える音響空間が単純な幾何学形状のみであったため,地形や建築物に対応するために任意の境界形状に対応したプログラムを開発した。さらに,レンダリングのための3次元データ生成プログラムも同時に開発した。開発されたプログラムにより,任意に回転された直方体室の残響特性と剛体球上の音圧周波数特性を理論と比較したところ良好な一致が確認され,本プログラムの妥当性が示された。 ②については,広大な音響空間に対し,ロングパスエコーの影響も再現するには,大量のメモリが必要となるためGPUクラスタシステムの拡張を実施した。現有のGPUクラスタシステムに2ノードを増設することでメモリ不足を補った。これにより,屋外音声明瞭度予測および提示に必要な最低限の数値モデルが構築可能となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,①音空間レンダリングを用いた実際の地形や建築物に対応した音声明瞭度予測手法の開発,②レンダリング結果をスピーカアレイに出力することで音場そのものも3次元的に提供する音声明瞭度提示システムの構築を目的としている。これらを総合して,防災システム設計者に対して音響的なフィードバックが可能なシステムを構築することを目的としている。 それに対し本年度は,研究計画や研究実績で示したように,まず①のためのプログラムを開発した。すなわち,地形や建築物などの3次元形状を音空間レンダリングに組み入れるための任意境界条件を検討し,プログラムを開発した。それに加え,レンダリングのための3次元データ生成プログラムも同時に開発した。開発されたプログラムにより,任意に回転された直方体室の残響特性と剛体球上の音圧周波数特性を理論と比較したところ良好な一致が確認され,本プログラムの妥当性が示された。これは,当初計画通りの成果である。 本研究では,広大な音響空間に対し,ロングパスエコーの影響も再現することを目的としているが,そのためには大量のメモリが必要となる。これに対処するため,GPUクラスタシステムの拡張を実施した。現有のGPUクラスタシステムに2ノードを増設することでメモリ不足を補った。これにより25%程度のシステム増強ができた。これも,当初計画通りの成果である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,まず開発されたプログラムと拡張されたクラスタシステムを用いて,いくつかの数値実験を行い,屋外音声明瞭度予測のためのレンダリング条件の検討および実空間を想定したレンダリングモデル構築のための指針策定を行う。すなわち,屋外音声明瞭度予測のためのレンダリング条件の検討,および実空間を想定したレンダリングモデル構築のための指針策定を行う。さらに,これまでのレンダリング結果を24chスピーカアレイシステムに出力することで屋外音声明瞭度提示システムを構築し,主観実験による性能評価を実施する。
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