研究課題/領域番号 |
26350461
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研究機関 | 富山高等専門学校 |
研究代表者 |
保前 友高 富山高等専門学校, 商船学科, 教授 (30470032)
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研究分担者 |
中山 良男 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 企画本部, 総括主幹 (20357677)
杉山 勇太 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 安全科学研究部門, 研究員 (30711949)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 爆薬 / 爆発影響 / 爆風 / 水 / 低減 / 地下式火薬庫 / 小スケール実験 / 数値解析 |
研究実績の概要 |
1.研究の目的:爆薬の近傍に水を配置して爆発させると周辺の爆風圧が低減化することが知られているが,そのメカニズムは必ずしも理解されているとは言い難い。水を用いた爆風圧低減化技術は,保安技術として大変有効であるが,応用のためには,低減化のメカ二ズムの解明が不可欠である。本研究では,この解明のため,縮小モデルを用いた爆発実験を行う。爆発後の衝撃波,爆発生成物と水の相互作用を調べるため,状況を高速度カメラにより記録し,評価する。また,水の蒸発による爆発のエネルギー吸収を定量的に見積もるため,爆発に伴う水の蒸発量を計測する。その上で,独自の数値解析コードによりデータの解釈を行う。最終的には,使用条件,環境に応じた最適な水の使用方法を提案し,保安に資する。 2.本年度の成果(1)縮小モデルを用いた可視化実験:地下式火薬庫を模擬した縮小モデル(透明樹脂製角管)を製作し,内部でアジ化鉛100mgを爆発させ,状況を高速度カメラで記録し,爆点に比較的近い管内部,および外部での圧力履歴を計測する実験を行った。特に管内の水配置をパラメータとして実験を行い,爆薬の真下に配置した水が,爆風圧低減に大きな役割を果たしていることを見出した。ただし,衝撃インピーダンスは低減に大きな影響を与えないという結論を得た。また,新たに爆点近傍の状況を高速度カメラで撮影する手法を開発し,爆発直後の水と爆発の相互作用の状況を観察した。 (2)種々の条件下における蒸発量の計測:爆点近傍の水の状況の高速度カメラ撮影を行ったが,今年度は,実際に蒸発量を計測するまでには至らなかった。 (3)数値解析コードの改良,実験データの解釈: これまでに開発してきた手法を用い,本年度実施した実験の数値解析を行い,空気と水の間でのエネルギー交換量を定量的に検討することで爆風圧低減の要因を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高速度カメラを用いた可視化と数値解析コードについては,研究実施計画に従い,おおむね順調に進展している。すなわち,透明角管を用いた縮小モデル実験では,水の配置をパラメータとした実験,爆点近傍の高速度カメラ撮影を行い,これらの結果から,水による爆風圧低減化の主因は,爆発直後の水と爆発の相互作用であるが,衝撃インピーダンスは大きく寄与していないと推測した。蒸発量計測については,計画未達となっているが,最終年度である今年度は,重点的に取り組み,結果を得る。数値解析では,これまでに開発してきた手法を用い,本年度実施した実験の数値解析を行った。水と空気中を伝播する衝撃波の干渉によって、特に爆薬直下の水が波立つ様子などを観測できた。角管から開放される爆風伝播過程を取得することができ,実験で得られた爆風圧を数値解析によって概ね再現できた。爆風圧低減メカニズムの解明に向け,爆風が水に入射することによって獲得する水の運動エネルギーや,水と空気の温度差によって移動するエネルギーを定量的に評価した。その結果,爆発直後の衝撃波によって断熱圧縮された高圧・高温空気から爆薬直下にある水への内部エネルギー移動量が爆薬の持つエネルギーの数十パーセントに達し,爆風圧の低減に寄与することがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により,縮小モデルを用いた実験については,方法を確立できた。今年度については,実験回数の制約により,これまでに実施できなかった水等の配置方法や再現性の確認を行う実験を行い,実験結果を確実・詳細なものとする。 蒸発量計測については,実験容器の製作を行い,爆発による蒸発量を評価する予定である。 数値解析手法については,昨年度開発した手法では水による爆風圧低減は空気と爆薬直下の水との間でのエネルギー交換が重要であることが明らかになった。今後はモデル形状などをパラメータとして効率のよく爆風圧が低減できる条件を見出し,保安上,効果的な水の利用方法を提案する。 今年度は,本研究の最終年度となるため,特に結果の公表について,重点的に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度については,計画よりも多い支出であった。これは,学会等での成果発表を計画よりも多く実施し,旅費として支出したためである。ただし,前年度までの支出状況のため,今年度についても次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は,最終年度となるため,計画したものの未実施の実験,および確認のための実験を実施するとともに,これらに必要な材料や部品を購入する。また,研究成果公表のために重点的に取り組み,計画通り使用する予定である。
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