研究課題/領域番号 |
26350463
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研究機関 | 和歌山工業高等専門学校 |
研究代表者 |
辻原 治 和歌山工業高等専門学校, 環境都市工学科, 教授 (50188546)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 避難シミュレーション / モバイルマッピングシステム / 実写映像 / 災害図上訓練 |
研究実績の概要 |
昨年度、モバイルマッピングシステムで撮影した動画映像のDIG(災害図上訓練)への活用を提案した。地図に加え映像を用いることで、災害情報の特定がしやすくなり、また、特定した災害情報を映像上に文字情報として表示できるため、危険箇所などを記憶に留めやすくする効果が期待できる。しかし、そのような文字情報をテロップにより表示する方法がとられているため、その情報が映像の中のどの部分に相当するのかなど、必ずしもわかりやすい表現ではなかった。また、文字情報の表示開始と終了のタイミングは、映像のフレーム番号を指定して行っていたため、やや煩雑であった。本年度は、このような短所を改善するために、災害情報に関して予めメッセージボードを作成しておき、映像の中に適宜配置することができるよう、システムを改良した。 これと並行して、今年度は洪水や津波による浸水の状況を実写映像上で表現する方法を提示した。津波のハザードマップは従来から対象の沿岸地域に対して作成され、住民に配布されているが、現状のハザードマップだけで、危険性は必ずしも十分に伝えられていない。洪水や津波のハザードマップは一般に、浸水深などが二次元の地図上に等深線や色別の網掛けなどで表現されているが、最も効果があるのは普段見慣れた建物などが実際に浸水したときの様子を見ることであり、そのような疑似体験による直感的な理解が、洪水や津波の危険性に対する意識の明確化に役立つと考えられる。本研究では、モバイルマッピングシステムによって撮影した映像から、比較的簡単に建物や道路等をCG化し、浸水の様子が表現できるシミュレータについて、その基本的なシステムを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書類において、平成27年度の計画としていた「実写映像および電子地図を利用した災害図上訓練の機能付加」を挙げており、特定した災害情報を、実写映像に直接CGとして作成したメッセージボードを写し込む形式で実現した。従来の災害図上訓練では、直接地図上に書き込んだり、付箋など貼り付けることでしか災害情報を共有できなかったが、開発したシステムでは映像を用いることができるため、災害情報をより強くかつ長く記憶に留めることにも役立つと考えられる。 さらに当初計画にはなかったが、モバイルマッピングシステムを利用した洪水や津波による浸水シミュレータの開発にも着手することができ、浸水も考慮した避難シミュレータの実現にも貢献するものと期待できる。 しかし、今年度中に着手する予定であった利用者による評価が遅れており、今後実施予定である。 以上のことから、区分(2)を選択した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は最終年度であり、以下のように研究を進める予定である。 1)ゲーム性を取り入れた避難シミュレーションへの展開 避難訓練や災害図上訓練は、災害時の被害軽減のために実施され極めて重要であるが、参加者は多くない。現行の訓練では、特定のシナリオの下で、参加者が同じ場所と時間で行うものであり、マンネリ傾向は否めない。一方、PCやスマートホンを利用すれば、さまざまなシナリオの下に災害対応の訓練や学習が行える。最終年度は、これまでの研究成果をベースとして、地元をバーチャルな都市空間として作成し、そこにゲーム性を取り入れた避難シミュレーションや災害図上訓練ができるものへの展開を模索する。これは、訓練への参加者の裾野を拡大することにつながると期待できる。 2)利用者による評価と課題の抽出およびシステムの改良 地理条件の異なるいくつかの地区を対象として現地調査や避難訓練の調査を行い、本研究で開発したシステムを用いたワークショップを実施する。そして、システムの適用性や課題についてヒヤリングを行い、システムの改良にフィードバックする。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は、実在の地域での十分な現地調査やワークショップの実施ができなった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は、精力的に調査や撮影を行う予定であり、それに伴う旅費や、電子地図およびデータ保存用大容量ハードディスク等の購入に当てる予定である。また、今年度が研究期間の最終年度であり、国内外で論文発表や口頭発表を積極的に行いたい。そのための登録料や旅費の増補分として使用する。
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