研究実績の概要 |
本研究は,高温火災環境下の消火時に, ハロゲン系消火剤から発生する酸性毒性ガスの生成機構および被災者や消防職員に与える生理的影響を,In-situフーリエ変換赤外分光法(FTIR)およびヒト肺細胞毒性評価法を組み合わせたリアルタイムフロースルー型システムにより明確にし,電気自動車の蓄電池における熱暴走火災時の消火,発電所・工場の電気火災消火時等のハロゲン系消火剤運用時の安全基準等の提言を目的とし,下記5つの目標を掲げた.(1)In-situフーリエ変換赤外分光測定系,その下流にヒト細胞培養装置,顕微鏡観察装置,生死判別装置を組み合わせた実時間フロースルー型システムを構築する. (2)高温熱分解,くん燃,有炎燃焼の火災条件を実現できる燃焼部およびハロゲン系消火剤添加部を構築する. (3)ハロゲン系消化剤としてFK-5-1-12を使用する.火炎構造と酸性ガスの発生機構の関係を生成化学種,発生領域,発生時間等の測定データを収集する.(4)ヒト肺細胞A549により, 細胞の形態変化,生死率,代謝変化を酸性ガスのデータと比較して毒性評価を行う.(5)電気自動車の蓄電池の熱暴走火災に対する消火実験および酸性ガスの危険性評価を行う. その結果,(1)(2)に関して,高温熱分解,くん燃,有炎燃焼の火災条件を実現できる燃焼装置,酸性ガスを含んだ燃焼ガス中の水溶性物質と非水溶性物質の分離装置,ヒト細胞A549への暴露装置を構築した. FTIRについては既存装置故障(結晶破損)のよりガス分析組込はできなかった.(5)に関して,燃焼実験に適したリチウムイオン電池の自作方法の確率,電池火災の消火実験装置の製作を行った.以上,主実験装置はFTIRを除いてほぼ100%完成し,予備実験を行った.しかし,上記目標(3)である,FK-5-1-12を使用した酸性ガス測定データ,ヒト肺細胞A549による毒性評価までは至っていない.
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