現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
一様な表面電位分布を形成するための帯電法(7本のコロナワイヤとパンチ穴電極を用いたトリオード帯電)の開発と背面接地電極にリング溝(内径80 mm,溝幅12 mm)を設けてクーロンメータ飽和の問題を解決し,測定精度と再現性を向上させた。この改善のもとに,絶縁性コートやライナーによく使用されるPTFE(厚さ0.05, 0.1, 0.2, 0.3, 0.5 mm),ポリエチレン(0.05, 0.07, 0.08, 0.1 mm)及びホウ珪酸ガラス(0.1, 0.21, 0.3, 0.5 mm)を用いて,初期表面電位-放電電荷の測定を改めて実施した。その結果,ブラシ放電では,放電電荷が初期表面電位の2乗に比例することを見出した。さらに,この特徴はシートの等価的厚さ(厚さ/誘電率)にも依存していた。これらの結果はブラシ放電の着火性評価(リスクアセスメント)に有用な結果であり,着火性評価に応用される。また,シートが絶縁破壊して沿面放電に遷移しないシートの厚さも上記のシートに対して求めた。この帯電法では帯電しながら絶縁破壊の状態も観測できるが,この絶縁破壊が沿面放電に遷移することはなかった。絶縁破壊を起こすとこれが沿面放電に遷移するという仮説もあるが,この結果はこれを覆す実験的立証であり,沿面放電の防止技術につながる結果である。 上記の改善のほか種々の測定上の問題を解決しながら,特に沿面放電遷移の再現性と実験精度を向上させることができたが,これらに時間を要しため,シミュレーションのコード開発に遅れが生じている。しかしながら,これまでよりも再現性と精度がよい測定データを普遍化した実験結果を提供することは重要と考える。
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