研究課題/領域番号 |
26350475
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宇津木 充 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (10372559)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 比抵抗モニタリング / ACTIVE観測 / 火山噴火 |
研究実績の概要 |
ACTIVE観測システムを用いた阿蘇中岳第一火口周辺での繰り返し観測を、2014年11月の噴火後、活動が小康状態になった6月及び8月に実施した。但し火口北側は噴火による降灰でアクセスが難しくなった事から、火口西側の観測点を中心に観測を行った。 中岳火口周辺では、2011年の観測開始以来、小規模噴火などのイベントに伴ってレスポンス関数 (送信電流と誘導磁場の振幅比から求められる地下比抵抗分布の情報を持つデータ)の時間変化(地下比抵抗変化を示唆するデータ)が何度か観測されてきた。しかしこれらの結果からは、表層付近の比抵抗に対応する高周帯(数十~100Hz)と深部200~300mに対応する長周期帯(1~10Hz)で変化が生じ、その間の帯域では殆ど変化が無かった。しかし2014年11月の噴火に際しては、噴火前の9月の結果と、噴火直後の11月(26日)の結果を比べると、10~数十Hzの、これまでレスポンス関数 の変化が見られなかった帯域で急激な時間変化が観測された。このレスポンス関数の変化は火口直下、地下100~150mの領域で比抵抗が上昇した事を表しており、マグマの上昇に伴い地下水が押しのけられ、結果火口直下の比抵抗が相対的に高くなった事を示唆している。火口直下が相対的に高比抵抗になる状態は8月の観測の際にも確認され、火口直下が高温になっている状態が継続している事が示唆された。 但しこの後、2015年9月及び10月に水蒸気爆発が発生し、火口周辺の繰り返し観測点及び北側の人工電流送信局がダメージを受け観測が継続できない状態になった。これを受け、現在観測体制の再構築を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2014年11月の噴火が小康状態になった後、噴火によりダメージを受けた観測点の復旧作業を進め、一部で繰り返し観測を再開できる状態に回復できた。しかしその後、2015年9月の噴火で北側の繰り返し観測点、南側第三火口内の観測点が降灰と噴石により使用できなくなった。また噴火後の小規模な泥流で、火口北側に敷設した人工電流送信線が破断、送信用の電極が全て土砂に埋もれ復旧できなくなった。これらの事から、既存観測点が使用できず観測継続が困難な状況となった。
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今後の研究の推進方策 |
上の状況を受け、現在火口南側の砂千里内に新たな電流送信局を設置し、アクセスが比較的容易な火口西~南にかけ、新たな観測点アレイを構築すべく準備している。当初計画では、ACTIVE観測装置のレシーバをリースして観測体制の増強を行う予定であったが、別予算(H27補正予算・九州火山総合観測システム)での予算措置が行われる事となった為、これにより比抵抗モニタリングシステムの増強を行う事とした。これにより、人工電流送信局及び受信局全点に、無線LANルータを設置し、遠隔からのデバイス起動、データ吸い上げが可能となる。またソーラーパネルにより連続稼働し、従来の繰り返し観測から準連続観測へ切り替える事を予定している。さらに各デバイスに避雷器を設置しより堅牢な準連続観測システムを構築する予定である。以上の観測システムの再構築を2016年度において実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の当初計画では、火口周辺にソーラーパネルを設置し従来より短い間隔で観測を行う事が出来る観測点網を構築する予定であったが、2014年11月の噴火を受け、新たな観測網構築より従来の繰り返し観測実施を優先した。但し2015年9月の噴火以降、火口周辺が噴火警戒レベルが設定されてから初めてレベル3に引き上げられ、火口周辺への立ち入りがさらに困難な状況となった。このため当初予算で計上していた準定常観測点網の構築に係る予算執行が困難な状況になった。 また当初計画では、ACTIVE観測装置のレシーバをリースして観測体制の増強を行う予定であったが、別予算(H27補正予算・九州火山総合観測システム)での予算措置が行われる事となった為、これにより比抵抗モニタリングシステムの増強を行う事とした。
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次年度使用額の使用計画 |
2015年11月末に噴火警戒レベルが2に引き下げられたことを受け、従来の観測点のうち火口西側の観測点を復旧した。但し火口北側に敷設されていた人工電流送信局が甚大なダメージを受けた為次年度以火口南側の砂千里内に新たな電流送信局を設置し、またアクセスが比較的容易な火口西~南にかけ、新たな観測点アレイを構築する事を予定している。また当初計画では最終年度に国際学会で成果報告を行う予定であった。しかし該当年度に、4年に1度開催されるIUGG国際学会が2015年6月に行われた。IUGGは当初成果報告を予定していたAGU学会より規模が大きく参加者人数も多い事から、成果報告のインパクトがより強いものとなるため、この学会で成果報告を行った。
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