研究課題/領域番号 |
26350476
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
為栗 健 京都大学, 防災研究所, 助教 (70335222)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 桜島火山 / 火砕流 |
研究実績の概要 |
本研究は2006年以降、噴火活動が活発化している桜島火山の昭和火口で発生する火砕流を伴う噴火の発生メカニズムを解明することを目的としている。地震、地盤変動、空気振動、ガス放出量などの地球物理学火山観測から火砕流発生を決定付ける要因を検出し、噴火準備過程の段階で火砕流の発生予測を行う。 平成26年度において、桜島島内に2点の臨時地震観測点を設置し、観測を継続している。また、京都大学防災研究所附属火山活動研究センターによって設置されている水管傾斜計、伸縮計による地盤変動観測、3観測点における空気振動観測、桜島東側にある映像観測を維持継続し、常時データの収録を行っている。 臨時観測および常時観測から得られた地震、地盤変動データから昭和火口の噴火の前駆現象として以下の知見が得られた。噴火の1~3時間前から山体膨張を示す地盤変動が観測される。噴火の直前には膨張レートの減少もしくは停止が見られる。膨張開始の30分~1時間後から微小な前駆地震が発生し始め、時間と共に頻度、振幅が増加する。膨張レートの減少もしくは停止に合わせて、前駆地震の頻度、振幅がさらに増加する。火砕流を伴う噴火の際には、上述の膨張レートの減少もしくは停止する時間が他の噴火と比べて長いことが明らかになった。これは火砕流が発生する噴火の直前における火道内の状況が他の噴火と相違があることを示している。 噴火に伴う地震動から噴火の力学過程を見出すために、波形解析を行った。噴火地震に見られる引き波に着目し、火道収縮の過程を定量的に調査した結果、火砕流を伴う噴火の収縮相は他の噴火に伴う地震に比べて長いことが明らかになった。 今後はこれらの解析結果に空気振動や映像解析を加えて、火砕流を伴う噴火の発生メカニズム解明を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の研究計画では、火砕流発生メカニズムの解明のために臨時地震観測点の設置、京都大学における定常観測点のデータ取得を挙げていた。2点の臨時地震観測点を設置し、データが安定的に取得できており、また、定常観測点におけるデータも合わせて解析のためのデータ蓄積が進んでいる。 得られた地震および地盤変動データから火砕流発生を決定付ける要因となりうる前兆現象が検出されている。また、噴火に伴う地震動の解析から火砕流を伴う噴火の力学過程にも他の噴火と相違が見られている。 空気振動、映像等のデータも着実に取得が進んでいるが、まだ取得データの解析にはいたっていない。ただし、次年度における研究遂行の準備は整っており、平成26年度の研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は現在遂行している臨時地震観測および定常観測点のデータ取得を継続していく。地震および地盤変動観測から得られた火砕流を伴う噴火の特徴的な前駆現象をより詳細に明らかにする。また噴火に伴う地震動の引き波、空気振動、映像から火砕流を伴う噴火の力学過程を明らかにし、前駆現象と合わせて発生メカニズムの解明を行う。 火砕流を伴う噴火の地震動をより詳細に調べるために波形解析を行う。噴火を伴う地震では単一の震源ではなく時間とともに震源位置や震源メカニズムが変化する震源過程が考えられる。構造性地震の震源過程解析に使われる波形インバージョン法を用いて爆発地震のD相の震源メカニズムを推定する予定であるが問題点も多い。構造性地震の解析の場合、比較的地震の規模が大きく広い範囲の地震観測点のデータを使用することにより、理論波形の計算に使用する速度構造はある程度単純に仮定できる。本研究におけるD相の解析の場合、地震の規模は小さく観測点は密に配置することになる。そのため、速度構造の仮定を慎重に行う必要がある。この点については2013年12月に行われる桜島火山体構造探査によって得られる浅部速度構造を使用する。また、火山地形により地震波形が大きく影響されるため、地形効果を含めた理論波形の計算方法を組み込んで解析を行う予定である。
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