研究課題/領域番号 |
26350477
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研究機関 | 帝京平成大学 |
研究代表者 |
小森 次郎 帝京平成大学, 現代ライフ学部, 講師 (10572422)
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研究分担者 |
佐藤 剛 帝京平成大学, 現代ライフ学部, 准教授 (00468406)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 富士山 / 雪代 / 積雪構造 / 氷板 / 落石 / 事故事例 / 登山道 / 現地調査 |
研究実績の概要 |
スラッシュ雪崩の発生域の調査:富士山の積雪深の観測は山域内ではほとんど行われていない。そこで平成26年5月と平成27年2月~3月に、現地の残雪状況を御殿場側斜面から宝永山北側において確認した。 晩春の残雪:浅い谷地形では3mを超す積雪があることが確認できた。このシーズンは記録的な大雪であり、東麓斜面も通常より残雪が多かった。それでも、残雪が分布する範囲が限られることから、その時点で急激な降雨・融雪があったとしても大きな雪代に発展する可能性は小さい。したがって、過去に発生した規模の大きな晩春の雪代は、平成26年春季以上の残雪があったか、もしくは発生直前に大量の積雪があったことが原因として考えられる。 冬季の積雪:浅い谷地形では4mを超す積雪が比較的広い範囲に分布することが確認できた。積雪には上面から順に、新雪/しまり雪・ザラメ雪/底面に広く分布する氷板、といった特徴が確認できた。また厚さ数mmから数cmの氷板が何層も確認された。これまで多くの場合は、積雪下の地盤(凍結スコリア)が難透水層となり、それより上の積雪がスラッシュ雪崩になるとの報告が多かったが、底面や積雪層中の氷板も雪崩発生のすべり面としての同様の役割を果たすと考えられる。 落石調査:それぞれの登山道について危険箇所の抽出を行った。また、国内の過去の落石事故例を調べたところ、集団での落石被災は富士山だけで見られる現象であるが、最近25年間では白馬大雪渓、剱岳、奥穂高周辺、についで富士山で事故が発生していること、現地では斜度27~30度程度の緩傾斜でも落石が発生していることが明らかになった。富士宮ルートの山頂直下はルートの変更が望ましい。 これらについては2014年7月に「地理」7月号に掲載し、2015年5月に開催される地球惑星科学連合大会の「雪氷学」と「火山防災の基礎と応用」の各セッションで発表の予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
調査に赴く時間が足りないことで、現地データの蓄積が不十分となっている。また、研究成果の公表が一般雑誌への執筆と学会口頭発表だけとなっており、成果の公表と地元への還元を更に進めていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
スラッシュ雪崩、落石、ともに発生状況や発生源の記録には、現地での面的な状況把握が必要である。近年、研究分野にも導入が進んでいる無人機(UAV)による空中写真の取得と写真解析を急ぎ行う必要がある。また、現地の気温・地温、連続撮影については許認可の問題からいまだに開始されていないので、その点も進める必要がある。 落石の発生箇所と継時的変化の把握には、現地での繰り返し撮影による記載と地図化を行う。実施は登山シーズンの開始前と開始後、積雪前、にそれぞれ予定している。これには、地元の研究者(例えば、山梨県富士山科学研究所)等との連携も模索していきたい。 一方、研究成果の地域還元のために、自治体との手堅いつながりを構築し、地域住民等に富士山の雪崩と落石を紹介しつつ、防災に関する啓発を進めていく。 なお、専門分野の研究者には「富士山の非噴火時の災害と雪氷環境(仮題)」として本年7月、または8月に現地見学・討論の機会を設ける予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に行った現地での調査では、研究代表者(小森)の単独での実施によって計画の達成が概ね可能であった。また、6月の残雪が例年より多く、尚且つその後の夏山開山時期前の一般登山者の数が多かったため、登山道脇で実施する予定であった岩盤の測量を当該年度内に実施することができなかった。以上から、現地調査補助、および現地測量等の委託として予定していた助成金の使用が行われなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度に予定していた項目もあわせ、現地調査・長期観測の実施を増やす計画である。
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