2016年の熊本地震では、全部で50人の死者が出たが、その大多数はは起震断層となった布田川断層の北側3kmの範囲内で生じたものであった。一方、家屋の全壊被害は断層線から10km以上離れた場所でも相当数生じた。監視カメラの映像によると、断層線近くでは、衝撃的な短周期の揺れが卓越したために、家屋がわずか2~3秒以内で全壊し、家屋内部にいた人は机の下に体を移動させる時間的なゆとりがなかったからと推定される。この例が示すように、死亡率のほうが、家屋全壊率よりも鮮明に起震断層近くに集中した分布を示すと考えられる。歴史地震の場合に起震断層を特定するのに死者率分布図がより有効であろうと推測することが出来る。
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