研究課題/領域番号 |
26350481
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
安江 健一 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, バックエンド研究開発部門 東濃地科学センター, 研究副主幹 (10446461)
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研究分担者 |
松原 章浩 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, バックエンド研究開発部門 東濃地科学センター, 技術・技能職 (40399308) [辞退]
廣内 大助 信州大学, 教育学部, 教授 (50424916)
徳安 佳代子 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, バックエンド研究開発部門 東濃地科学センター, 博士研究員 (90721944) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 活断層 / 阿寺断層 / C-14年代 / 火山灰 / 強熱減量 / 粒度 / 帯磁率 |
研究実績の概要 |
本研究は、炭素14(C-14)年代測定・火山灰分析・粒度分析・帯磁率測定・土色測定・強熱減量測定・電子スピン共鳴(ESR)測定・地中レーダ探査などの複数の手法を組み合わせて、活断層露頭において肉眼観察では確認が困難な堆積物中の断層変位基準を定量的に把握する体系的手法を構築することを目的としている。 平成27年度は、前年度に引き続き、活断層である阿寺断層の露頭において採取された堆積物試料(主に黒色土)を用いて、各種分析・測定を実施した。その結果、黒色土のフミン酸とヒューミンのC-14年代値の差、火山ガラスや重鉱物の含有率、強熱減量や含水率の特徴は、断層の両側の堆積物を対比する際に有効である可能性を示すことができた。ただし、これらは全て類似の対比を示すわけではなく、総合的に検討することが必要であると考えられる。粒度分布については、深度によって異なる特徴が認められるものの、明瞭な違いが認められなかったり、同じ試料でも異なる結果が得られたりする場合があることから、断層の両側の堆積物を対比する際に慎重な検討が必要である。その他、帯磁率の値が場所によって異なる特徴が認められたこと、古地磁気測定が可能な試料であることが確認できたことから、今後、帯磁率の詳細な分布や断層をトラバースする古地磁気の特徴を把握することで、肉眼観察では確認が困難な堆積物中の断層変位を検討できる可能性がある。さらに、実際の活断層調査での適用においては、時間対効果および費用対効果を踏まえた手法の体系化が重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、肉眼観察では確認が困難な堆積物中の断層変位基準を定量的に把握する手法を複数の手法を組み合わせて構築することである。これまでに断層変位基準の指標としてC-14年代、火山ガラス、重鉱物、粒度、強熱減量、含水率などの有効性を確認するとともに、これらの指標を測定・分析する手法の適用性を確認してきた。これらの成果から、断層変位基準を定量的に把握する手法に見通しが立ち、今後は、時間対効果および費用対効果を踏まえた手法の体系化を進めていく状況であることから、おおむね順調に進展していると考えている。さらに、帯磁率測定や古地磁気測定の適用検討を開始していることや、当初検討していたESR測定や地中レーダ探査などの手法の適用も今後可能であることから、これらの成果も加えることで、より汎用性が高い手法の構築が可能と考えている。なお、本研究を進める中で、連続的なC-14年代測定が断層変位基準認定に有効であることに加え、詳細な断層活動時期の把握にも有効である可能性も認められ、予想以上の成果も得られつつある。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、引き続き主に分析・測定に係わる室内作業を継続し、得られた結果を評価して断層変位基準を定量的に把握する体系的手法を構築する予定である。特に、平成27年度に適用可能であることを確認した帯磁率と古地磁気の測定について、帯磁率の詳細な分布や断層をトラバースする古地磁気の特徴を把握するための分析とデータ解析を行う予定である。その他、ESR測定や地中レーダ探査などの手法の適用も検討する。これらの成果を総合して、時間対効果および費用対効果を踏まえた体系的手法の提示を行う。また、平成28年度は研究終了年度であることから、学会等において研究成果を積極的に紹介する予定である。さらに、本研究で検討した手法によって得られた活断層の変位や活動時期を分かりやすく発信するために、一般向け展示パネルの作成を行い、公共の施設等に展示をしたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
分析に使用する試料の採取や研究分担者との打ち合わせが予定より少なかったため、国内旅費の使用が減り、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は研究終了年度であることから、年度の初めから試料採取・分析、取りまとめに向けての打ち合わせを行うとともに、学会等において研究成果を発信する必要があり、主にそれらの旅費として使用する予定である。また、研究成果を分かりやすく発信するために、一般向け展示パネルの作成も計画しており、その作成費用として使用する予定である。
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