研究課題
本研究は、活断層露頭において、肉眼観察では確認が困難な堆積物中の断層変位基準を定量的に把握する体系的手法の構築を目的としている。平成27年度までに、活断層である阿寺断層のトレンチ掘削壁面から採取した堆積物試料を用いた各種分析等の結果、上下に数cm間隔の炭素14年代値、火山ガラスと重鉱物の含有率、強熱減量、含水率の特徴が、断層付近の堆積物の対比に有効であることを示すとともに、古地磁気測定が可能な試料であることを確認した。平成28年度は、主に火山灰分析、帯磁率測定、帯磁率異方性測定、古地磁気測定を行った。火山灰分析は、トレンチ掘削壁面における上盤側と下盤側において下部から上部に数cm間隔で採取した堆積物を用いて行い、姶良Tn火山灰、アカホヤ火山灰、カワゴ平火山灰の広域火山灰に加え、低発泡タイプの火山ガラスを特徴とするローカル火山灰を抽出し、これらの火山灰が断層付近を境に変位していることを確認した。帯磁率測定は、トレンチ掘削壁面の断層付近において行った結果、地層ごとに値が変化しており、その地層が断層付近を境に変位していることを確認した。帯磁率異方性測定は、トレンチ掘削壁面において1辺2cmのプラスチックキューブに採取した試料を用いて行い、断層付近の試料の最大軸が断層面に沿う特徴を示すことを確認した。古地磁気測定も帯磁率異方性測定と同じプラスチックキューブ試料を用いて行い、断層付近で多く回転していることを確認した。これらの結果から、火山灰分析、帯磁率測定、帯磁率異方性測定、古地磁気測定が、堆積物中の断層変位及びその基準を定量的に把握する際に有効であることを示すことができた。時間対効果と活動時期の解明を踏まえた場合、帯磁率測定、試料採取、古地磁気測定、帯磁率異方性測定、含水率測定、試料分割、炭素14年代測定・強熱減量測定・火山灰分析の順で体系的に行うことが有効である。
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