研究課題/領域番号 |
26350484
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
関 奈緒 新潟大学, 医歯学系, 教授 (30270937)
|
研究分担者 |
田邊 直仁 新潟県立大学, 人間生活学部, 教授 (40270938)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 防災 / 自治体職員 / 健康管理 / 作業管理 / 作業環境管理 / 産業保健 |
研究実績の概要 |
【研究目的】災害対応業務担当行政職員の健康に及ぶ短期的・長期的健康影響を明らかにするとともに,強化が求められる防災行政において負担増が危惧される地方自治体の防災・危機管理担当部署の現状と課題を明らかにし,今後の防災・危機管理行政における業務管理のあり方を労働衛生の三管理の観点から検討する。【27年度の研究実績】今年度は新潟県知事部局職員7018人(臨時含む)を対象とした「中越地震後10年における追跡調査」を実施し,震災時に県職員であったと回答した4,416人を解析対象とした。震災後の業務負荷関連の心身不調については「あった」14%,「なかった」62%,「おぼえていない」14%,「業務負荷はなかった」7%,無回答3%であった。心身不調あり者において不調を最も強く感じた時期は「震災直後」31%,「1~2か月後」31%,「3~6か月後」19%,「6ヵ月~1年後」9%,「1年以上」4%であり,震災後2カ月以内に不調のピークを迎える者が最も多い一方,半年以上たってから強い不調を感じる者も少なくないことが明らかとなった。不調の持続については「すぐに改善した」23%,「1~2か月程度」30%,「3~6か月程度」20%,「6か月~1年程度」14%,「2年以上」11%であり,2か月程度で半数は改善するものの,約1割は2年以上不調が持続していた。以上より健康管理対策は災害直後から開始し,年単位で長期的に行うことが重要と考えられた。また災害対応業務従事職員の健康管理に最も必要な対策とされたのは「早期ローテーションの確立」36%,「健康相談」21%であったが,重要性の1位~3位を合計すると,職員の6割が「早期ローテーションの確立」を,5割が「上司からの休養確保の指示」を,4割が「仮眠室・休養室の整備」を選択しており,災害対応職員の健康管理における作業管理,作業環境管理の重要性も明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では全国の都道府県及び市町村(無作為抽出)を対象とした全国調査を平成27年12月~平成28年1月に実施する予定であったが,研究代表者が11月末に不慮の事故により受傷し,計画を1か月半以上延期せざるを得なくなった。年度計画通り平成27年度中に全国調査を行うとすると2月~3月での実施となるが,年度末は行政機関において通常年間で最も業務多忙となる時期であり,この期間の調査は調査対象となる行政職員の負担増加とそれに伴う回収率の著しい低下が予測される。このことは研究成果の信頼性にも関わる問題であることから,全国調査の実施時期を平成28年度前半に順延すべきと判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
1)平成28年7月までに都道府県及び全国の市町村から無作為抽出した500市町村を対象に郵送法による質問紙調査を実施し,危機管理担当部署における職員の健康管理,人事管理等の実態把握と課題の抽出を行う。 2)平成27年度に実施した「中越地震後10年における追跡調査」と平成16年の中越地震時に新潟県が実施した「災害対応職員の心身の健康調査」とのリンクを行い,災害後の新潟県職員の長期的な健康影響を検討する。 3)平成26年度に実施したインタビュー調査及び上記の1),2)の研究成果に基づき,自治体の行政職員における災害対応業務の長期影響を明らかにするとともに,防災・危機管理担当自治体職員に対する適切な健康管理,業務管理対策を検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の不慮の事故による負傷に伴い,平成27年度に実施を計画していた都道府県及び無作為抽出による市町村の防災・危機管理部署を対象とした全国郵送調査を平成28年度に順延したことにより,次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
当初平成27年度実施を計画していた全国の自治体の防災・危機管理部署を対象とした郵送調査の実施及びデータ入力,解析を平成28年度に実施する。
|