研究課題/領域番号 |
26350494
|
研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
湯浅 哲也 山形大学, 理工学研究科, 教授 (30240146)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 位相コントラスト / コンピューテッド・トモグラフィ / X線角度アナライザー / アーチファクト / 放射光X線 |
研究実績の概要 |
DFI (Dark Field Imaging)-X線光学系を用いる位相コントラストCT (PCCT; Phase-Contrast Computed Tomography) は,数cm角の軟組織病理標本を,非破壊的に高コントラストで3次元再構成することができる(空間分解能は約10 um).しかし,骨や石灰化などの硬組織を含むサンプルでは,放射状アーチファクトが生じるため,形態観察および定量解析の精度が著しく損なわれる.本課題では,骨や石灰化などの硬組織を含む標本より取得される投影から,高い精度の再構成画像を得るためのデータ処理技術を開発する.提案手法の有効性を理論・シミュレーション・実験を通して実証する. 当該年度の研究では,理論・シミュレーションを主として取り組んだ.提案する再構成アルゴリズムは,再構成画像空間とサイノグラム空間を行き来する繰り返し最適化として構成される.この際,両空間において満たすべき制約条件を課しながら,解を収束させる.本アルゴリズムでは,どのような制約条件を課すかが良好な解を得ることの成否に大きく関わる.シミュレーションデータを用いて,さまざまな制約条件を吟味し,最適な制約条件を特定した.この際,DFI光学系に基づくPCCTの投影シミュレーションについては,実際の物理および実験パラメータを反映させ,なるべく実際に得られる投影と同様になるよう工夫した.得られたシミュレーションデータに提案アルゴリズムを適用することで,良好な結果を得ることを確認した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
実際の物理的な条件を反映したシミュレーションデータを作成し,従来の再構成アルゴリズムを適用した場合,著しいアーチファクトを発生した.これに対して,当該年度に考案したアルゴリズムを適用すると,これらのアーチファクトは消え,定量的にも精度高く再構成することが可能となった.シミュレーションの条件は,放射光X線を光源として得られる実験データと同様になるよう設定しているため,生体サンプルを用いた実験でも良好な結果が得られるものと大いに期待できる.
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は,高エネルギー加速器研究機構において,放射光X線を光源としてin vitro生体サンプルから実験データを取得する.取得された実データに対して提案アルゴリズムを適用して,アルゴリズムの有効性を検証する.現在想定しているサンプルは,リウマチを発症させたラットの前足,人から切除された石灰化を有する動脈である.これらのサンプルについては,すでにホルマリンで固定されており,次回の実験において撮像するための準備はすでに整っている.
|
次年度使用額が生じた理由 |
5月下旬に高エネルギー加速器研究機構で実験があり,実験に必要な器材を購入する予定である.現在,見積もり中であり,見積もりが出次第,購入手続きをする予定でいる.
|
次年度使用額の使用計画 |
4月中あるいは5月初旬には,上記実験器材として執行する予定.
|