研究課題/領域番号 |
26350500
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
稲垣 純子 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (90271056)
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研究分担者 |
廣畑 聡 岡山大学, 保健学研究科, 教授 (90332791)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ADAMTS1 / がん内圧 / 細胞外マトリックス / 血管新生 / リンパ管新生 |
研究実績の概要 |
腫瘍組織内部の圧力(interstitial fluid pressure: IFP)は、未熟で透過性の亢進した血管と機能的でないリンパ管により容易に上昇する。IFP増大は、腫瘍血管・リンパ管を含む腫瘍組織および腫瘍を取り巻く細胞外マトリックスにも影響を及ぼしていると考えられる。今回、ヒト皮膚がん由来細胞A431を皮下移植した腫瘍内圧上昇モデルを用い、IFPが増大した腫瘍組織の増殖や血管新生・リンパ管新生にも関与すると考えられている細胞外マトリックス分解酵素特にADAMTS1の発現について検討した。また、ドレナージによりIFPを低下させた後の細胞外マトリックス分解酵素の発現についても検討した。ADAMTS1は血管新生のみならずリンパ管新生にも阻害効果を示すことが明らかになっているが、血流の強い血管において高い壁面せん断応力下で発現が増加することも報告されている。今回、IFPが増大した腫瘍組織では、がん細胞やがん間質内でADAMTS1が高発現していることが分かった。逆にIFPを低下させるとADAMTS1の発現は減少することも明らかになった。次に、in vitroでリンパ管内皮細胞に10 %の進展刺激をかけるとADAMTS1のmRNA発現量は約2~2.5倍に増加したが、リンパ管内皮細胞のマーカーであるリンパ管ヒアルロン酸レセプターLYVE-1の発現量は1/2から1/3に減少することが分かった。また、A431がん細胞に10%の進展刺激をかけるとリンパ管内皮細胞と同じようにADAMTS1のmRNA発現量が約2倍に増加することが分かった。 本解析のため、ドイツより日本学術振興会外国人特別研究員(欧米短期)としてホフマン博士を派遣し、共同研究を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ドイツの日本学術振興会外国人特別研究員(欧米短期)であるホフマン博士との共同研究により、腫瘍内圧上昇モデルの解析も進み、また培養細胞進展システムの系もすでに整い、解析が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き、マウス背部に移植した腫瘍片において内圧上昇と基底膜の破綻の関連を検討するため、IFPの変化で発現量が変化するADAMTS1マトリックス分解酵素に着目し、がん周囲のマトリックスによる圧負荷感受機構について、基底膜から細胞への情報伝達系、さらには血管新生・リンパ管新生への関連性から明らかにして行く。 まず、培養細胞伸展システムを用いて、A431あるいはA549がん細胞に伸展刺激を加え、発現上昇が認められるADAMTS1の発現調節メカニズムの解明を行うために、メカノセンサーと考えられているintegrin beta1、イオンチャンネルやVE-カドヘリン、PECAM1(CD31)、LYVE-1などの接着因子、さらに、VEGFA、VEGFC、bFGF、PDGF-BBなどの増殖因子のmRNA、タンパク質発現変化、および活性変化、さらには免疫組織学的な局在の解析を行い、メカニカルストレスとADAMTS1の転写発現および活性制御機構の解明を行う。 さらに、関連が示唆されるメカニカルストレス情報伝達関連分子のsiRNAやその阻害剤を用いて、培養細胞並びに担がんマウスモデル系で、腫瘍増殖およびがん血管新生・リンパ管新生への影響を検討する。
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