研究実績の概要 |
受精卵に流れによるせん断応力(Shear Stress: SS)を負荷した際の各細胞応答を調べるために、共焦点蛍光顕微鏡とマイクロ流体システムを用いて、細胞内の挙動が観察できるように、流路内に保持したマウス受精卵変化の解析を行った。流れ刺激を桑実胚と胚盤胞に負荷し、細胞内カルシウム濃度の変化を計測した。これまでの実験結果から、SS負荷時には細胞内体積が増加する現象が観察され、細胞内カルシウム濃度変化を議論するにあたり、二波長励起・発光で評価するレシオイメージングが必要であった。今年度は、レシオイメージングが可能な蛍光色素の検討を始めに行った。共焦点蛍光顕微鏡のレーザー波長に適し、かつ受精卵の細胞内に留まる蛍光色素はFura-2, Fluo-4, Fluo-8, Rhod-4であった。励起・発光波長の組み合わせおよび感度から、Fluo-8(Fluo-4), Rhod-4の組み合わせが好適であることを見出した。その後、SS負荷実験を行った際に得られた画像の詳細を解析中であるが、受精卵内細胞が圧縮された際に細胞内カルシウム濃度の上昇が見られた。この傾向は過去の我々が得た研究結果と対応していた。また、顕微観察が可能な状態での受精卵培養系を構築し、二細胞期から胚盤胞まで発育することを確認した。さらに、三次元ハイドロゲル培養について、受精卵培養に適用できるように検討している段階である。本研究は平成28年度で終了であるが、蛍光顕微観察による受精卵の物質代謝と発育との関係について今後研究を進める計画である。
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