研究課題
イリノテカンは日本発市販抗癌剤である。活性本体「SN38」は難水溶性であるため、イリノテカンを含む多くのアンモニウム塩誘導体が研究されてきたが、非イオン性での水溶性化の例は無かった。こうした非イオン性水溶性化法を実現化するために、我々はこれまでに対称分岐型オリゴグリセロール(BGL)の開発を続けてきた。低価格かつ世界規模で余剰を抱えるグリセリンを原料とするので低コストであり有効利用にもなる。またBGLは製法が重合反応を経由しない高純度合成工程であり、かつ対称構造を有しているので、最終目的の水溶性誘導体が1種類の高純度分子とすることが出来る。こうしたBGLを利用し、当該抗癌剤の活性本体部分であるSN38の新規水溶性誘導体の合成を計画し、実際にBGL003(グリセリン3量体)とBGL007(グリセリン7量体)を連結した新規SN38誘導体の合成に成功した。BGL003誘導体に関しては、リンカーを2種類とし、一方は体内代謝でSN38をリリースし易い構造、もう一方はリリースしがたい構造の2種類を合成し、BGL007誘導体と合わせて3種類の合成に成功した。この間にBGLの大量合成に関しても検討を進め、新しい製造方法を開発した(未公開:特許出願準備中)。これらの成功により、実験室インフラ内でさえ、2段階で700gを一気に製造出来るようになった。またBGL007の製造工程も改良を進め、1,2-dihydroxxyacetone(グリセリンの真ん中の水酸基がカルボニルになったものでグリセリン等価体)のオキシムを活用する方法で総収率の改善に成功した。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件)
Int. Immunopharmacol
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