研究課題/領域番号 |
26350505
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
世良 俊博 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40373526)
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研究分担者 |
工藤 奨 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70306926)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 肺胞上皮細胞 / 伸展刺激 / 細胞骨格 / 小胞 |
研究実績の概要 |
肺胞を覆っている肺胞上皮細胞は肺の虚脱を防ぐために肺サーファクタントを細胞内の小胞から分泌する.肺胞上皮細胞は,人工呼吸器などにより過度な力が加わると小胞分泌能が喪失することが知られている.一方で,伸展刺激に対して細胞骨格を再構築させることで形態変化を行う.伸展刺激に対する肺胞上皮細胞の形態変化と分泌能に関係があることが示唆されているが,細胞骨格と分泌能の関連は詳しくわかっていない.本研究では,肺胞上皮細胞を弾性薄膜上に培養し,単軸伸展時の細胞骨格の変化と細胞内小胞輸送の関係を調べた. PDMS製のチャンバーにA549細胞(ヒト由来腺ガン化肺胞上皮II型細胞)を播種し,20%の伸展負荷(1,3,6時間)を与え,伸展刺激による細胞内の小胞と細胞骨格の量と位置の変化を検討した.小胞のと細胞骨格の染色はそれぞれキナクリン二塩酸塩二水和物とローダミンハロイジンを用い,共焦点蛍光顕微鏡を用いて断層画像(1ミクロン間隔)を取得した. 静置状態では細胞内の小胞は1時間で約4割減少したのに対し,伸展刺激を加えると細胞内の小胞は増加し,その時Fアクチンは小胞が存在する上部で特に増加していた.このことから,小胞輸送がFアクチンの重合によって阻害されていることが考えらえる.一方で,伸展刺激3時間ではFアクチンは一旦減少し,細胞内の小胞も減少していた.これは,Fアクチンが脱重合し小胞輸送の阻害が解消されたためと思われる. また,肺胞上皮細胞と血管内皮細胞の共培養用の厚さ20ミクロン程度の多孔質PDMS膜の作成も行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度作成した伸展刺激を負荷できる装置を使って,PDMS膜に培養した肺胞上皮細胞に伸展負荷した.その時の細胞内の小胞の輸送と細胞骨格の重合・脱重合の関係を検討した.その結果,伸展刺激によって細胞骨格が重合されると細胞内の小胞輸送が阻害され,細胞骨格が脱重合される細胞内の小胞が減少していたことから,小胞の輸送は細胞骨格と関係があることが示唆された. さらに,肺胞上皮細胞と血管内皮細胞の共培養用の厚さ20ミクロン程度の多孔質PDMS膜の作成も行った. 以上の理由から実験はおおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度行えなかった肺胞上皮細胞の炎症反応テストを行う.従来研究によると肺胞上皮細胞にナノシリカ粒子を暴露する方法が提案されており,まずは本手法を用いてリモデリング反応を検討する.また,本年度作成した多孔質PDMS膜を用いて肺胞上皮細胞と血管内皮細胞の共培養を行う.最終的には,共培養下において肺胞上皮細胞がリモデリングした際の微粒子の透過性の変化を評価する.
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に細胞伸展刺激負荷装置をメーカーから購入予定であったが,コントローラー部分を自作したため当初予定していた物品費より支出額が減った.その差額が本年度も残っており,使用計画自体は当初予定していた通りに進んでる.
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次年度使用額の使用計画 |
肺胞上皮細胞と血管内皮細胞の共培養確立のための培養液や試薬,また多孔質薄膜PDMS膜作成等に使用する.また,成果発表として国際会議での発表を予定している.
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